院長ブログ

腰痛

2019.3.27

「医者が癌になったとき、99%の医者は抗癌剤を使わない」という。
https://www.buzzfeed.com/jp/seiichirokuchiki/kenkobon-01
本当か?
ソースが気になるところだ。
非常にセンシティブなテーマだが、一体誰がどうやって、こんな統計をとったのだろう。
仮にそう思っている医者がいるとしても、よほど親しい人に対してでないと、こんな深い本音は出さないと思うんだけど。
ただ、99%というのは言い過ぎだとしても、自分が癌になったときに抗癌剤を使わない医者は、一般の人が思う以上に多い、というのは確かだと思う。
そりゃ、現場でたくさん見てるもんな。「この人、明らかに抗癌剤のせいで死期を早めたな」っていう症例を。
医者もバカじゃないから、さすがに現代医療の矛盾に気付いてるって。
抗癌剤はじめ、製薬会社の薬にまったく何の疑いを持ってない医者もいるにはいるだろうけど、むしろ少数派じゃないかな。

そう、医者が病気になったとき、本音が出る。
普段患者に提供している治療法と、自分が病気になったときに選ぶ治療法。
当然同じだろうと思われるかもしれないが、一致しないことは案外多いに違いない。
患者には平然と出す薬でも、自分が飲むかどうかとなったら絶対飲まない、なんて薬は、山ほどあるだろう。
「そんなダブルスタンダードが許されていいのか」と咎めることはできない。
愛社精神のあるサラリーマンだって、常に自社製品ばかり使っているわけではなく、競合他社の製品を使うことだってあるだろう。
「正直、こんな商品、俺なら買わないな」と思いながらも営業しないといけないのが、勤め人のつらさだろう。
医療だって同じことだ。
ビジネスなんだから、医者だけが経済的利益を度外視して、聖人君子であることを求められてはたまらない。
医者も経済活動に従事する一人の人間なんだから、医者の良識に期待なんてしちゃいけない。

医者がコモンな疾患、たとえば腰痛になったとして、すなおに病院を受診するだろうか。
整形外科を受診すればどういう診察の流れになるか、行く前からわかっている。
レントゲンなりMRIなりを撮って、「特に問題ありませんね」で、痛み止めを処方される。
単なる対症療法。根本的な原因にアプローチしてないのだから、こんな薬を飲み続けても一生治らない。
こんな「治療法」とも呼べない治療法しかないのが、西洋医学なんだ。
同業者だから、気持ちはよくわかる。別に商売の邪魔をするつもりはない。
しかし、自分が患者として、こんなバカバカしい『ごっこ』に付き合うのは、ごめんこうむりたい。
医者はこう考える。「いわゆる代替療法のほうが、まだしも希望が持てる」と。

たとえば整体。
ただのマッサージ、とバカにしてはいけない。
きちんとした治療哲学を持った整体サロンのほうが、痛み止めを処方するしか能がない病院よりも、はるかに根本的な改善策を提供してくれるものだ。
ミオンパシーという治療手技がある。https://www.uroom.jp/
腰をギューギュー押してもらうだけのマッサージだと思って施術を受ければ、ずいぶん意外な感じがするはずだ。
加圧と弛緩を繰り返す、いわゆるマッサージではなくて、一定の姿勢を把持することで組織への血流を回復させることを主眼に置いている。
腰痛の背景には、血流低下(およびそれに起因する組織の酸素不足・栄養不足)がある、というのが基本的な考えだから、偏った食生活やストレス過多の生活習慣の改善をも含めて、指導する。
すばらしい。
本来、この指導をするのは一般の医療であるべきだ。
しかし情けないことに、整形外科での治療は、痛み止めの処方に終始している。ロキソニンやリリカによって真の救いが得られるかどうか、考えればわかることだろう。
医療機関ではなくて整体サロンなので、一般の医療保険を使うことはできないが、やっていることは一般医療よりももっと医療らしい。
そう、医者が病気になったときこっそりお世話になるのは、こういう治療院だ。

もちろん、栄養療法に頼るのもいい。
栄養療法の魅力は、何と言っても、副作用の少なさだ。
単なるビタミンで治ればもうけもの。まず、一番最初に試すべき代替療法だろう。
腰痛に対しては、ビタミンDを補いたい。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC558660/
『ビタミンD欠乏が慢性腰痛に関与している可能性』
慢性腰痛をどう抑えていくかというのは医療従事者にとって難しい課題であり続けているが、ビタミンDの重要性をきちんと認識している人は少ない。
ビタミンD欠乏が多くの人に見られることは、多くの研究の示しているところである。
たとえば、ミネアポリスのクリニックに慢性の筋骨格系の疼痛で通院している150人の患者のうち、93%にビタミンD欠乏が見られた。
腰痛(6カ月以上特に誘因のない腰痛)のために6年以上神経内科に通っている患者のほとんど(83%)に、血中ビタミンDの異常低値が見られた。
ビタミンDのサプリを飲ませると、当初ビタミンDの濃度が低かった人の全員で、臨床症状の改善が見られた。
著者らは、腰痛患者では受診時の血中ビタミンDによるスクリーニングを義務化すべきだと結論付けている。
オーストラリアの医学雑誌に寄せられた報告によると、慢性腰痛で脊椎固定術を受けたものの手術が失敗した2例の患者において、重度のビタミンD欠乏があったという。
いずれの患者も、ビタミンDサプリの投与によって症状の好転が見られた。
「腰痛を診る外科医や内科医は、潜在的なビタミンD欠乏がある可能性に注意すべきである。なぜなら、ビタミンDを補うだけで症状が軽快する可能性のある患者が、治療による合併症(脊椎固定術の失敗、再手術や入院期間延長による費用の増加など)を避けることができる可能性があるからである」と著者らは強調している。
ガンコな筋骨格系の痛みを伴う患者はすべて、ビタミンD欠乏に気付かないまま放置している可能性が高い。
慢性腰痛を診る現行の臨床ガイドラインでは、ビタミンD(25ヒドロキシビタミンD濃度の測定による)の評価が含まれていないが、これを調べ、欠乏が見られた際にはビタミンDのサプリを補うよう助言すべきである。

この論文は、「長年悩んだ腰痛がビタミンDのサプリを飲むだけで、あっさり完治してしまう可能性がある」、と言っているわけだ。
腰痛があまりにもひどくて、手術さえする人がいる。こんな悲劇は、あってはいけない。
重度の腰痛の背景にはビタミンD欠乏があるということは、整形外科医なら当然知っているべきなんだけど、残念ながら一般の医者はこんなこと、まず知らない。
だから、一般の無知な整形外科に通ったところで、時間と労力のムダということだ。
自分でさっさと知識を仕入れて、ビタミンDを飲んで、自分で治しちゃうのが一番手っ取り早いよね。

ゲルマニウム

2019.3.26

周期表を見れば、ゲルマニウムは、炭素やケイ素と同じ第14族元素に属している。
ケイ素は最近健康への効果が注目されているが、それに比べて、ゲルマニウムはそれほど知られていない。
オーソモレキュラー栄養療法を創始したポーリングもホッファーも、特にゲルマニウムについて言及していない。
これは実にもったいないことだ。
ゲルマニウムの健康への効果は、すばらしいの一語に尽きる。
栄養療法で一般的に使うビタミンやミネラルと別段競合するわけではなく、併用しても何ら問題ないのだから、使わない手はないだろう。
個人的な経験としても有効性を実感している。
いくつか論文を紹介しよう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bpb/41/5/41_b17-00949/_html/-char/ja
『ゲルマニウム132(合成有機ゲルマニウム)の培養哺乳類細胞に対する抗酸化活性』
要約
ゲルマニウム132は合成の有機ゲルマニウムであり、食品サプリメントとして利用されている。
本研究では、ゲルマニウム132の培養哺乳類細胞に対する抗酸化活性を調べた。最初に、ゲルマニウム132の哺乳類培養細胞に対する細胞毒性を、乳酸脱水素酵素(LDH)濃度を計測することにより決定した。
ゲルマニウム132は3通りの細胞系に対して細胞毒性がなかった。次に、細胞全体のATP含有量および細胞数を計測することによって、ゲルマニウム132の細胞増殖作用を決定した。
チャイニーズハムスター卵巣(CHO-K1)とヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)の細胞をゲルマニウム132で処置すると、用量依存性に細胞増殖が促された。最後に、過酸化水素によって引き起こされる酸化ストレスに対するゲルマニウム132の抗酸化活性を、細胞内活性酸素種(ROS)とカルボニル化タンパク質の濃度の計測によって決定した。
CHO-K1とSH-SY5Yの細胞をゲルマニウム132で処置して培養すると、過酸化水素によって引き起こされる細胞内活性酸素種とカルボニル化タンパク質の濃度が抑制された。この研究の結果によって、ゲルマニウム132には過酸化水素によって引き起こされる酸化ストレスに対する抗酸化活性があることが示された。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3043151
『有機ゲルマニウムによる治療的効果』
要約
ゲルマニウムはすべての動植物に微小量で存在している。その治療的効果として、免疫賦活作用、酸素供給作用、フリーラジカル貪食作用、鎮痛作用、重金属デトックス作用などがある。
毒性学の研究によると、ゲルマニウムは体にすみやかに吸収・排出され、安全であることが示されている。
十年以上におよぶ臨床治験や私的な臨床経験では、ゲルマニウムは、癌、関節炎、骨粗鬆症など、様々な重度の疾患に対する有効性が示されている。
ゲルマニウムには、インターフェロン、マクロファージ、サプレッサーT細胞を誘導したり、ナチュラルキラー細胞を活性化するなど、抗ウィルス特性、免疫学的特性があり、AIDSの治療および予防に対する有効性が示唆されている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4034287/
『ラット盲腸の腸内細菌叢に対する有機ゲルマニウム(Ge132)とラフィノースサプリメントの効果』
要約
多価トランス[(2カルボキシエチル)ゲルマセスキオキサン](ゲルマニウム132)は最も一般的な有機ゲルマニウム化合物である。
ゲルマニウム132を摂取すると、胆汁分泌が促進される。
ゲルマニウム132およびある種のプレバイオティクスにより糞便の色が黄色くなることから、ゲルマニウム132とラフィノース(プレバイオティクスとして用いられるオリゴ糖)の投与によってラットの盲腸の特性がどのように変化するかを評価した。
また、これらの化合物の投与により盲腸の腸内細菌叢にどのような変化が起こるかも併せて比較した。
さらに、ゲルマニウム132とラフィノースの同時投与によって、βグルクロニダーゼ活性(大腸癌の関連因子として知られている)に対する影響を調べた。
オスのウィスターラット(3週齢)に以下の食事のうちの一つを与えた。(1)コントロール食(対照群)、(2)0.05%のゲルマニウム132を含む食事(Ge132群)、(3)5%のラフィノースを含む食事(RAF群)、(4)0.05%のゲルマニウム132と5%のラフィノースを含む食事(GeRAF群)。
ラフィノースを含有する食事によって、ビフィドロバクテリウム、乳酸桿菌および全腸内細菌量が有意に増加しており、ゲルマニウム132の投与によってこの増加が抑制されることはなかった。
ラフィノースの摂取によって盲腸での酢酸の産生量が有意に増加した。
盲腸内容物のβグルクロニダーゼ活性は、ゲルマニウム132の摂取により増加したが、ラフィノースの摂取により有意に減少した。
これらの結果は、ラフィノースとゲルマニウム132の同時摂取によっては、いずれの化合物も腸内での発酵や胆汁分泌を抑制することはない、ということを示している。
また、ゲルマニウム132の単体投与の場合には誘導されるβグルクロニダーゼ活性の増加は、ラフィノースとゲルマニウム132の同時摂取ではキャンセルされる。

『ゲルマニウムと私』(浅井一彦著 玄同社)に、喘息を訴える中学生の患者に対してゲルマニウムを投与していると、その中学生、やたら数学ができるようになって、教師からカンニングを疑われた、という話が出てくる。
ゲルマニウムは酸素運搬能を高め、記憶力、思考力、集中力など、脳機能の改善にも著効する。高血圧に対してゲルマニウムを飲んでいるうちに、囲碁が非常に強くなった、という話もある。
症状の改善を目指して飲んでいたら、思いもかけないうれしい副産物が得られるというのは、本物の治療法によくあることで、ゲルマニウムもそういう本物の一つだということだ。

リジン

2019.3.25

体を動かすと息が上がって心臓が痛くなる場合、労作性狭心症の可能性が高そうだ。
一般の病院を受診すれば、造影剤を入れる検査を行って血管の狭窄を確認し、ステントを入れる手術を受けることになりそうだ。
日帰りでできるくらいの簡単な手術だけど、患者としては一体この手術を受けるべきかどうか、悩ましいところだろう。
「狭心症の治療には、本当にこの方法しかないのか。
仮に手術を受けたとして、それで治療終了、というわけではなく、一生薬を飲み続けることになるのか」
こういう人には、まずは栄養療法をオススメしたい。
http://www.orthomolecular.org/library/jom/1991/pdf/1991-v06n03%2604-p144.pdf

『症例報告:リジン・アスコルビン酸による狭心症の改善』
要約
重度の冠動脈疾患のある人に高用量のLリジンとアスコルビン酸を使うことで、労作性狭心症の改善が見られたことを、このように世界で最初に報告できることは喜ばしいことである。
この治療計画は、血栓性動脈硬化症において、脂質タンパク程度の径の外因性LDL様分子(冠動脈疾患の独立したリスク因子)が、傷付いた動脈壁にあるフィブリンに結合してプラーク形成を開始する、という仮説に基づいている。
このメカニズムは、アポリポタンパクがプラスミノーゲンに非常によく似ていることや、低ビタミンC血症のモルモットや閉塞したバイパスの動脈硬化病変に脂質タンパクが蓄積していることと、関係している。
臨床家がこの一症例の劇的な改善を知り、刺激を受け、リジンとアスコルビン酸を狭心症に適用してすばらしい成果をあげることを期待している。

これはポーリングの論文だ。
要約だけ読んだのでは、何が何だか、よくわからないだろうから、本文の内容も踏まえて、説明しよう。
71歳の男性。初めて狭心症の発作に襲われたのは38歳のときで、以来、タバコは控え、適度に運動し、食事や体重にも気を使っている。
1978年に静脈グラフトの移植術を初めて受けたが、5か月後にすぐに2回目の手術を受けた。
伏在静脈がなくなったせいで、足にひどい浮腫が起こった。血栓、足の感染、両側の肺塞栓も起こった。
1987年再び狭心症の発作が起こったため、冠動脈形成術、投薬調整のために入院となった。
3回目の手術の後、服薬調整として、βブロッカー、カルシウム拮抗薬、ロスバスタチンは維持した。
アスピリン325㎎を投与していたが、眼内出血が起こり、末梢の視野欠損が生じたため、81㎎に減量した。
この処方に加えてビタミンの服用を開始した。
アスコルビン酸を6g、コエンザイムQ10を60㎎、マルチビタミン、マルチミネラル、ビタミンA、ビタミンE、レシチン、ナイアシンを加えた。
それでも、1日2マイルの歩行時には狭心症発作が起こった。そのときにはニトログリセリンを舌下投与することが必要だった。
もはや利用できる静脈グラフトがないため、4回目の手術というのは不可能だった。
ここで助言を求められたポーリングは、Lリジンを1日5g(6回に分けて)服用し、脂質タンパクの動脈硬化作用を抑制することを勧めた。
1991年5月にリジンを取り始めた。7月、彼のHDLは28 mg/dlと相変わらず低かった。 クレアチニンが0.9 mg/dlと高くないことから、必要とあればリジンを増やす余裕があった。
彼は今や、2マイルを歩いても、庭仕事をしても狭心症発作がでなくなった。 「リジンが奇跡のように効いている」と彼は手紙に書いた。
8月にはチェーンソーで木を切ったり、9月には自宅のペンキ塗りをできるまでに回復した。
9月後半、恐らく過労から再び狭心症の症状が出現したが、運動量を減らし、リジンを6gに増やすと、症状は再び消失した。

ビタミンCとリジンの併用によって、狭心症が劇的に改善した、というポーリングの症例報告。
ネットで調べてもらえればわかるけど、リジンのサプリはすごく安い。
「こんなに安物なのに、そんなに効くの?」って、逆にちょっと不安になるかもしれない^^;
病院から処方される薬は高いけど、効くどころが毒性があるものさえあるわけだから、薬理作用の優秀さと値段は関係ない。
リジンはアルギニンと拮抗してヘルペスを抑えるように働くから、疲れたときにヘルペスが出る体質の人にもリジンはオススメだ。

代筆

2019.3.24

睡眠薬に惑溺するようになって以後、文才は見る間に枯渇した。文壇の重鎮として周囲の畏敬を勝ち得てはいたものの、もはや新たな作品を生み出すことは到底できなかった。
そこで、大御所は一計を案じた。自分が文壇に引き上げてやった若い才能たちに作品を書かせ、それを自分の名前で以って世に出せばいい。評論家は「老作家の新境地」と新たな作風を持ち上げることだろう。名もない若手が一冊本を出したところで、誰も読まない。しかし、名前の書き換えひとつで、本の売り上げは跳ね上がり、出版社に莫大な利益をもたらすことだろう。そして代筆作品は、文豪の一作品として永遠に人々の心に記憶されることになる。これは、無名の若手にとってこの上なく名誉なことではないか。

以下、『三島由紀夫と一九七〇年』(板坂剛・編、鈴木邦男・対談 鹿砦社)の59ページからの引用です。
板坂…これは三島先生の奥さんが言ってるんですが、川端さんが受賞した対象になった作品は、『山の音』と『雪国』だけど、『山の音』のほうは実は三島先生が書いているんだと。
鈴木…ほんとかよ。
板坂…ほんとですよ、奥さんが言ったんです。フラメンコの先生に言ったんです。奥さんがフラメンコ習ってて。その奥さんが、ノーベル賞受賞作品としか言わなかったけど、あれはうちの主人が書いたのよって。
鈴木…じゃあ三島がノーベル賞を取ったようなもんじゃない?
板坂…だからその思いがあったから、ノーベル賞そのものもくだらねえと割り切れたんじゃないかな。
鈴木…言えばいいじゃん、あれは俺の作品だと。
司会…なんでまた川端の作品を三島が書くんですか?
板坂…特に晩年とかは、川端さんは睡眠薬中毒とノイローゼで作品なんか書ける状態じゃなかったらしいですよ。北条誠と沢野久雄という作家が川端の作品を書いてたっていうのは有名な話。北条誠の家の女中さんはね、北条が川端さんの原稿ばかり書かされて、自分のものは書けないからいやだってグチをこぼしていたって証言しています。沢野のほうも自伝に書いてますよ。しまいに、川端さんの原稿は直接自分のところに依頼が来るようになったって。
鈴木…本当?
板坂…沢野久雄の自伝にありますよ。どっちが書いているのかはわからないけど、ほとんど昭和三十年代の川端作品は、沢野か北条の手になるものらしいです。
鈴木…川端が書いた作品は?『伊豆の踊り子』くらい?『雪国』もかな?
板坂…『雪国』はさすがに自分で書いたんじゃないかと。あの辺から睡眠薬中毒で何も書けなくなった。でもあそこまで名声があるとなんとか書かなきゃいけないから他の作家に原稿依頼した。川端にも書かせたけど、書いてきたものは何がなんだかわからなかったって。だから他の作家に直させたそうですが、それがしまいには直接沢野久雄に依頼が来ちゃったって。このことでね、週刊誌が取材に来たことも、あったのよ、私のところに。でも記事にはならなかった。(中略)
安藤武さん、三島先生のことを書いている人だけど、あの人が『眠れる美女』の原稿を見て、これ川端さんの字じゃないと言ったそうです。すごくキレイな字で清書してある。
鈴木…じゃあ、だれ?
板坂…わからない。それでなんかどこかのパーティーで、川端さんと三島先生が同席して、三島先生は川端さんに対して、ノーベル賞受賞作品は、あれとあれだけど、一番の傑作は『眠れる美女』ですよねって三島先生が言ったら、川端さんは恥ずかしそうにじっと黙ったんだって。それで思うんだけど、もしかしたら三島先生が書いたんじゃないだろうか。だって『眠れる美女』ってほら、美を距離を置いて見てるでしょ。それって三島文学のテーマそのものじゃない?(中略)
いつも川端さんから原稿もらってた出版社の人間によれば、読めたもんじゃないと。川端さんの原稿はわけわかんないって。
鈴木…睡眠薬飲んでボーっとしてる時、夢遊病者のように書いてたって話だけど。

『眠れる美女』は確かに、一読して三島っぽいなという印象を持った。『禁色』に出てくる変態のおじいさんと同じようなキャラだと思った。文章も、川端的な「和文のやさしさ」みたいな感じじゃなくて、しっかりした「三島的エレガンス」を備えているようで、三島の代作だと言われれば非常に腑に落ちる。

作品を読んだときの「感じ」は大事で、たとえば源氏物語の宇治十帖は紫式部ではなくて別の作者によるものではないかという説が昔からあるのも、あの章だけ読んだ「感じ」がずいぶん違うからだ。
この「感じ」を、統計的に裏付けようとする試みがある。
ある語の使用頻度に着目し、多変量解析の手法を用いることで、「この作品では、他の作品に見られる作者の言葉遣いの傾向と明らかに異なる」ということを証明しようとしている。
以下は源氏物語の宇治十帖の分析で、この研究では別作者説は否定された。
https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=82408&item_no=1&attribute_id=1&file_no=1&page_id=13&block_id=8

以下は川端康成の『山の音』代筆疑惑を検証した研究。結論として、代筆は否定的となった。
http://www.anlp.jp/proceedings/annual_meeting/2015/pdf_dir/D6-2.pdf

宇治十帖はともかく、『山の音』に関しては編集者の証言など、状況証拠的には代筆に間違いない。
それなのに代筆だという結論が出ないのは、研究の手法(文体計量分析)自体がまだまだ未熟で発展途上ということだろう。

防御制止

2019.3.23

いつの『すべらない話』だったかけっこう初期の頃だったと思うんだけど、トークを始める前に出演者がまっちゃんに自己紹介していくところで、ある芸人が「緊張しすぎて、逆に何か眠くなってきました」って言ってて、「ああ、それわかるわー」って思った。
緊張も、行き過ぎて一周回ると、眠気に近いような感じになる。これは多くの人が経験のあるところだと思う。
この現象は生理学でちゃんと調べられている。最初にこの研究を行ったのはパブロフだ。
犬に餌をやる前に、ベルの音を聞かせる。これを繰り返すと、ベルの音を聞いただけで犬はヨダレを流すようになる。
これが有名な条件反射で、知っている人も多いだろう。
しかし、この研究の続きを知っている人は、そんなにいない。
ベルの音が鳴り続け餌への期待が高まるものの、肝心の餌が延々出てこない、となると犬はどうなるのか。
https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4939-1236-0_6

条件付け後、刺激(聴覚刺激、痛覚刺激など)を強めていくと、当初は生理的な反応(α波の減少、ガルバニック皮膚反応、瞳孔拡大、末梢血管収縮)が次第に増加し、やがて最高潮に達するが、その反応は次第に減少していく。
パブロフはこの減少パターンを、神経系への過剰な刺激に対して神経系が自らを守るために行う防御反応だと考え、これを防御制止と呼んだ。
パブロフのこの先駆的な仕事(1955年)によって、防御制止の考え方は様々な精神生理学的現象の説明に適応されるようになった。
たとえば激しい運動後の疲労、活発な精神活動後の集中力低下、覚醒・睡眠リズムなど、様々な現象の背景にこの働きが関与していると考えられた。
ひとしきりの身体的・知的活動によって、適切な疲労を感じることが必要だ(アデノシンの蓄積が疲労に関与していると言われている)。
https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-1-4614-3903-5_25
強い刺激が、いつまでも継続しては神経系に悪影響が出るので、体にはその刺激をちゃんと弱めるための仕組みがある、ということだ。

楽しみにしていた講演会。
いざ講演が始まって、全然つまらなかったら、どうなるか。
期待が高くて神経が興奮していた分、それをバランスするために防御制止が働く。
こうして講演会の会場は、眠気が支配することになる。
人間の生理的メカニズムなのだから、演者も主催者もお客さんをとがめることはできません^^;

ところで、1950年代のパブロフの研究は一世を風靡して、『条件反射』という言葉は学者だけでなく、一般の人にまで広く知られるようになった。
パブロフの研究は犬を使ったものだったが、実はパブロフの実験以前に、人を対象にして、同様の実験が行われていた。
アメリカの心理学者ジョン・ワトソンとロザリー・レイナーが、9カ月の幼児を相手に実験(後に『アルバートちゃん実験』と言われる)を行った。
幼児に白いモルモットを見せる。最初は、当然、何の反応も見せない。しかし白いモルモットを見せると同時に、大きな騒音を流す、ということを繰り返す。
すると、白いモルモットを見るとすぐに、反対の方向を向きハイハイしてそこから遠ざかろうとする反応を示すようになった。
さらに、『刺激の一般化』ということが起こって、レイナーの白い毛皮のコートや、白ひげをつけてサンタクロースに扮するワトソンに対しても恐怖を抱くようになった。

この研究は現在では批判されている。その理由は、第一に、研究デザインが非常にテキトーであること。
幼児に条件付けをするとして、その後の幼児の反応の計測が、何ら客観的ではなく、観察者の主観に頼り切りだった。
第二に、倫理的な問題。
実験してそれで終わり、じゃない。
『白いふわふわしたもの』に恐怖を感じるように条件付けされたアルバートちゃんは、その後どうなったのか?
https://www.verywellmind.com/the-little-albert-experiment-2794994

ワトソンとレイナーは、この男児の条件付けによる恐怖を取り除くことができなかった。この男児が引っ越してしまったためだ。
しかし最近、アルバートちゃんとして知られる男児のその後が判明した。『アメリカン・サイコロジスト』誌に、心理学者ハル・ベックによる7年の研究によってその後のことが明らかになった。
当時の研究や男児の母親を追跡したところ、アルバートちゃんの本名はダグラス・メリットだった。
しかしこの話はハッピーエンドで終わらない。
ダグラスは1925年5月10日、6歳のときに水頭症で死亡していた。「7年間彼を追いかけてきましたが、彼の人生はそれより短かったわけです」とベックはこの発見のことを語った。
2012年、ベックとアラン・フリッドランドは著書のなかで、「ダグラス・メリットはワトソンが1920年の実験で説明していたような”健康で正常な男児”ではなかった。それどころか、メリットは生まれついての水頭症で、ワトソンもそのことを知っていたが、子供の健康状態について捏造をしていた」との発見を公表した。
この発見はワトソンの研究業績に影を落とすものであり、研究の倫理・道徳の問題に一石を投じている。
2014年、ベックとフリッドランドの発見に疑いの目が向けられることになった。別の研究者が、ウィリアム・バージャーという名前の少年こそが、本物のアルバートちゃんだという証拠を提出したのだ。
バージャーは、ダグラス・メリットと同じ日に生まれており、生まれたのはメリットの母が働いていた病院だった。彼のファーストネームはウィリアムだが、ミドルネームはアルバートで、こちらのほうで呼ばれていた。
このように、アルバートちゃんをめぐって専門家たちもいまだに議論を続けているが、アルバートちゃんが心理学の歴史に消えない足跡を残したのが間違いない。

僕は心理学っていまいち好きじゃないんだけど、なぜといって、心理学の実験って捏造がすごく多いんだ。
しかも、ある実験を再現しようにも、結果を再現できないことはしょっちゅうある。
再現性というのは科学を構成する不可欠な柱のひとつだけど、心理学はその辺りからしてすごい不安定な印象だ。
そういう具合だから、そもそも心理学は科学を名乗る資格があるのかどうかも微妙だと思う。

癌治療4

2019.3.22

ホッファーもソールもビタミンKについてはほとんど言及していないけれども、最近の研究でビタミンKの抗酸化作用が注目されている。
『ヒト膀胱癌に対するビタミンCとK3の相乗的抗腫瘍作用について』という論文があるので、紹介します。https://pdfs.semanticscholar.org/33c8/2ef088a98b37ab9df5eb7f779ff878e5ee46.pdf

指数関数的に増大するヒト膀胱腫瘍細胞(RT4およびT24)の培養物を、5日間にわたって、ビタミンC単独、ビタミンK3単独、ビタミンCとK3の組合せ、によってそれぞれ処置した。また、ビタミンCとK3で1時間処置し、その後リン酸緩衝生理食塩水で洗い、5日間培養器のなかで培養した。
ビタミンの併用処置群において、抗腫瘍活性は、RT4系癌細胞では12~24倍、T24系癌細胞では6~41倍に、それぞれ高まっていた。ビタミンで処置したRT4系癌細胞をフローサイトメトリーにかけると、成長が停止している一群や細胞死している一群が見出された。
成長の停止した細胞はG0/G1-S期の間期で止まっていた。細胞死の原因は自己解離によるものだった。カタラーゼで処置するとこれらの細胞周期の停止および細胞死、いずれもがなくなったことから、これらの現象の背景には過酸化水素(H2O2)が関与していると考えられる。
過酸化水素の産生によって、脂質過酸化反応の軽度増加と細胞内のチオール濃度の減少が見られた。細胞のATP濃度を分析すると、ビタミンC単独処置群、ビタミンCとK3の組合せ処置群では、ATP産生の一過的な増加が見られたが、ビタミンK3単独処置群ではATP濃度が減少していた。
ビタミンCとK3の組合せ処置群において、脂質過酸化反応、チオールの減少、ATP濃度の調整は、いずれのビタミンの単独処置の場合よりも、17倍低い濃度でも起こった。これらの結果を踏まえると、ビタミンCとK3の組合せ処置による腫瘍細胞への毒性の増大は、酸化還元反応と酸化ストレス増大によるものと考えられる。

ビタミンCの単独投与よりも、ビタミンK3を併用すると抗腫瘍効果がさらに高まった、というのが上記論文の主旨だ。
本文の内容も踏まえつつ、作用機序についてもう少し説明しよう。
ビタミンCの『殺腫瘍作用』は、以前にも触れたが、酸化剤として作用するところにある。
具体的には、ビタミンCは細胞内での過酸化水素濃度およびその他の活性酸素種(ROS)の濃度を上昇させる。するとグルタチオンを始めとする細胞内のチオール濃度が減少し、細胞膜の脂質過酸化が起こり、細胞膜の脆弱化が起こる。
そこでビタミンK3を投与すると、細胞内のNAD、ATPが減少し、酸化を一層能率よく進めることができる。また、ビタミンK3はスルフヒドリル基(細胞骨格を形成するタンパク質)を酸化させることで細胞膜の弱体化に働く。さらに、DNA崩壊の誘導にも関わっている。

「健康のためには抗酸化、抗酸化、って言ってきたのに、まるで逆じゃないの。癌に対しては、体を酸化させないといけないってこと?」と思われるかもしれない。
実は全然矛盾していない。癌細胞に細胞死(アポトーシスであれネクローシスであれ)を起こすには酸化させないといけない、というだけであって、しかもそのためにわざわざ酸化剤(たとえば一般の抗癌剤は究極の酸化剤)をとる必要はない。
むしろ必要なのは適切な抗酸化剤だ。酸化・還元というのは電子の受け渡しのことで、電子の最終的な収支が、癌細胞に対する酸化、という形であればいいんだ。

上記論文では、ビタミンCとK3を100対1で投与したとき、最も能率のよく過酸化酸素が生じ、抗癌作用も強かった。
ビタミン併用によって単体投与時よりも17倍少ない量で同じ効果を得たというのは、重要な指摘だ。ビタミン投与量の節約になって、患者のコンプライアンス向上、経済負担の軽減にもつながるだろう。
実は生体のなかでは、こういう1+1が5にも10にもなる変化というのはザラに起こっているはずで、この相乗作用は臨床でも有用に違いない。
たとえば、癌治療を意図したビタミンC点滴でαリポ酸を加えるのも、この相乗作用を利用したものだ。知識のある医者はとっくに実践しているだろう。

癌治療3

2019.3.19

風邪をひいて、熱が出る。
これは万病を治す治癒反応そのもので、体内にたまった毒物のデトックスはもちろん、癌細胞さえも排除してくれるのではないか、という話がある。
たとえばこんな論文。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5884214/
『癌患者に発熱反応を引き起こすPAMPを用いる治療の安全性について』というタイトル。
要約
ウィリアム・コリーは1895年から1936年にかけて数百人の癌患者の治療にあたったが、その方法が実にふるっている。発熱を引き起こす細菌の抽出液を患者に注射を行ったのだ。
同様の研究として、1940年代にロシアのクリュイエバらがトリパノソーマの抽出液を用いた研究が挙げられる。多くの寛解症例および治癒症例が報告された。
これらの二つの研究において、治療が奏功した理由を分子レベルで説明するなら、『病原体に関連した分子パターン物質(PAMP)』こそがポイントではないかと我々は推測した。
癌のマウスにPAMPを複数回投与することで、固形腫瘍が消滅することを我々は示すことができた。
そこで我々としては、癌の治療に際しては。発熱を引き起こす治療プランを使って、承認された癌治療薬とPAMPを組み合わせて用いることを推奨したい。
この後ろ向き第1相臨床試験において、131人の癌患者に対して、細菌抽出物を用いた発熱惹起療法、発熱惹起療法と承認薬の組み合わせ、承認薬の組み合わせ、これらの治療法の有効性と安全性について我々は報告した。
感染による発熱を引き起こすことで副作用が予想されたが、軽微なものであった。523人以上の患者に対して発熱を引き起こしたが、深刻な有害事象は観察されなかった。

上記の論文は2018年で最近のものだけど、癌の温熱療法は昔からあった。
低体温(35度とか)は癌の増殖に適した環境で、逆に高体温(39度など)は免疫系の活性化と相まって癌細胞が死滅する、と言われている。
風邪をひいたからといって、何も落ち込むことはない。
むしろ大事なのは、風邪をデトックスのチャンスととらえて、上手に利用することだ。
風邪でしんどいからと、むやみやたらに薬で症状を抑え込むのは、実は一番やっちゃいけないことだ。
風邪のときにやるべきことはシンプルで、とにかく寝ること。あとは水分摂取。これだけだ。
これは科学的データというよりも経験的な話だけど、ちょくちょく風邪をひくいわゆる病弱な人のほうが、病気らしい病気をまったくしない人よりも案外寿命が長いのではないか、と思うことがある。
病気らしい病気をまったくしない人は、いざ病気になると癌とか脳卒中とかでぽっくり逝っちゃったりする。
「風邪をひかない人」には、二通りのパターンがあるようだ。つまり、体内に毒物がたまっていなくて本当の意味で健康な人と、風邪をひくことさえできないという人だ。
危険な農薬、食品添加物、遺伝子組み換え食品などが流通している現代日本で、前者の健康を保ち続けるのは相当困難なことだ。
こういう時代だからこそ、上手に風邪をひくことはとても大事だ。

風邪をひくことさえできずに癌になってしまった人に対して、病原体の抽出物を注射してわざと発熱反応を引き起こし、癌の治療に結びつけるというのが上記論文の治療法だ。
しかし、有効性が証明されているにもかかわらず、一般の病院でこの治療法を行っている医者はまずいない。
癌患者にとって不幸なことに、研究と臨床には圧倒的な乖離があって。研究での成果が臨床にまったく反映されていない。
癌の標準治療は何十年もあいかわらず「切る、焼く、殺す」だけ。
ビッグファーマの利益にならない治療法は、絶対に普及することはない。

以下の論文は2019年と最近のものだけど、癌を脂肪細胞に変換しようという発想が斬新だ。
ただ個人的には、実際的な治療法としてちょっと賛同しかねる。MEKインヒビターという抗癌剤を使っているからだ。
しかし製薬会社が利益にいっちょかみしている分、臨床で普及する可能性はあると思う。
https://www.cell.com/cancer-cell/fulltext/S1535-6108(18)30573-7
『脂肪を付けて転移をなくす~浸潤性乳癌細胞を脂肪細胞に変換することで、癌の転移を抑制する』
要約
癌が治療抵抗性を生じたり悪性転化して進行するのは、癌細胞に可塑性があるためである。上皮間葉転換(EMT)のような脱分化のプロセスは、細胞の可塑性を高めることが知られている。
本研究において、我々は癌細胞の可塑性を利用することで、上皮間葉転換に由来する乳癌細胞に分化転換を起こし脂肪細胞に変換させて癌を治療できることを実証した。
分化転換のメカニズムが分子レベルで明らかになることで、治療としてMEKインヒビターとロシグリタゾン(チアゾリジン系抗糖尿病薬)を組み合わせて使うアイデアが出た。
マウスやヒトの乳癌に投与したところ、この組み合わせ療法は浸潤性・播種性の癌細胞を有糸分裂後脂肪細胞への変換を促し、原発性腫瘍の浸潤および転移を抑制する結果となった。

癌治療2

2019.3.18

癌の研究をするには、まず、実験室レベルで癌細胞を作製することが必要だ。
しかし、正常な細胞をどうやって癌化させたらいいものか、世界中の研究者が頭を悩ませていた。
そうしたなかで、1915年世界で初めて癌細胞の作製に成功したのが、山極勝三郎博士である。
ウサギの耳にコールタールを塗ることで、癌を引き起こすことに成功した。
このおかげで、世界中の研究所で癌細胞の作製が可能となり、癌の研究が飛躍的に進むことになった。

山極博士の発見から百年余りの時が流れた。
癌について、かなり多くのことが分かってきた。
正常細胞がどのように癌細胞になるのか、もう少し具体的に見ていこう。

まず、最初の段階で関与しているのは活性酸素だ。この悪影響を抑えるのが体内にある抗酸化物質だが、活性酸素の封じ込めに失敗すると、DNAに傷がつく。
DNAの傷が癌に直結するわけではない。人間には損傷したDNAを修復する仕組みが備わっている。
しかしあまりにも強いストレスや、毒物摂取の多い不摂生な生活によって、修復能力を上回るほどのDNA損傷が蓄積すると、やがて細胞は突然変異を起こす。
ここでもまた、突然変異が細胞の癌化に直結しているわけではない。
突然変異した細胞には、自らの異常を認識するメカニズムがあって、これによって異常細胞は自殺する。これをアポトーシスという。
しかし、異常細胞のなかには、アポトーシスを起こさず、とことん生きようとする細胞がいる。それどころか、彼らは無限に増殖する能力を持っている。これが癌細胞だ。
それでも、癌細胞の発生が、そのままイコール癌の発症、というわけではない。
「健康な人も1日数千個くらいは癌細胞ができているが、免疫のおかげで発症しない」という説を聞いたことがあるだろう。体内には癌細胞を異物として排除する免疫の働きが備わっているわけだ。
この免疫細胞による抑制をも振り切って、異常増殖に歯止めがきかなくなった状態、これが癌の発症である。

上記のように、癌が発症するまでに人間は多くのセーフティネットを張り巡らしている。
ここに、癌治療のヒントがある。
セーフティネットをすべてかいくぐられたせいで癌の発症に至ったわけだから、どこかでこの流れをきっちりシャットアウトできれば、癌を止めることができるはずだ。

たとえばビタミンCがなぜ癌に効くのか。
・まず、ビタミンCは抗酸化物質だから活性酸素の軽減に寄与する。
・DNAの修復酵素の活性化や異常細胞のアポトーシス促進にも関与している。
・さらに、ビタミンCは免疫系を活性化する。ビタミンCを取り込んだ白血球は有走能や貪食能が高まり、癌細胞をも貪食する。
・また、ビタミンCによってコラーゲンの生成が促進され、癌細胞をいわば『コラーゲンの壁』で封じ込め、転移を抑制する。
・癌細胞に対する直接的な作用は、実はビタミンCが酸化剤として働く点にある。
「ビタミンCが酸化剤として働く?抗酸化物質じゃなかったの?」と思うかもしれない。
ビタミンCは還元作用(たとえば3価の鉄イオンを2価にするとか)を発揮した後には、モノデヒドロアスコルビン酸ラジカルになる。
このとき還元された金属が酸素への電子供与体として働く。そのとき、活性酸素種のスーパーオキシドラジカルが発生する。
これはSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって過酸化水素になる。この過酸化水素が、癌細胞に対する特異的な酸化剤として作用する。
正常な細胞にはカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼがあって過酸化水素を分解できるが、癌細胞にはこうした酵素が少ないため、過酸化水素による毒性をもろに受ける。
そのため、癌細胞内のミトコンドリアが障害を受けATP産生が減少し、細胞死が誘導される、という仕組みだ。
https://www.aimsci.com/ros/index.php/ros/article/view/149

丸山ワクチンって聞いたことありますか?
「ゴキゲン中飛車に対する居飛車側の対抗策のことでしょ」と答えた人は将棋ファンに違いない^^;
そうではなくて、医学でいうところの丸山ワクチンというのは、「結核患者は癌にならない」という観察から、丸山千里博士によって研究開発されたワクチンのことだ。
本来皮膚結核への適応だったが、癌への有効性(しかも副作用がまったくない)が示されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnms1923/38/5/38_5_267/_article/-char/ja/
しっかりしたエビデンスがあるにもかかわらず、やはり、一般の医療では認められていない。「知る人ぞ知る治療法」といった存在になっている。
国立がん研究センターで所長を務めた某医師は、患者には一般の抗癌剤を投与しながら、自分が癌になったときには丸山ワクチンを使っていた、なんていう話もある。
丸山ワクチンの抗癌作用は、ビタミンCの効き方と似たところがある。
まず、免疫系に作用する。つまり、マクロファージを活性化して癌細胞の貪食を促進し、NK細胞が活性化して癌細胞を攻撃、排除する。
また、こうした白血球から分泌される様々なサイトカインが、癌の増殖を抑制する。
もう一つ、丸山ワクチンにはコラーゲンの増殖作用があり、癌を封じ込める。このあたりもビタミンCと似ている。

一般に認められてない癌治療としては、他にゲルソン療法、アミグダリン(梅、ビワ、アンズなどの種の成分)療法、重曹、ホウ素、ヨウ素など複数あるが、共通していることがある。
これらの治療法はみな、活性酸素の発生からDNA傷害、免疫系の機能不全、そして癌の発生に至るプロセスのどこか途中で、きっちりと流れを断ち切る点だ。
しかもどの治療法も安価で、比較的容易に実行できる。
ひるがえって、一般のいわゆる三大療法(手術、放射線、抗癌剤)はどうか。
三大療法は要するに、「切る、焼く、殺す」治療法であって、いずれも、上記の癌の発生プロセスをまったく無視している。
癌の発生メカニズムに関する仮説など、研究現場で培われた知見が、臨床現場ではまったく生かされていない。
「癌は一度できたら自然に治ることはない」という考え方のままで、何十年も経過している。こんなおかしな話はない。
術式の変更(腹腔鏡を使いだしたり)とか新しい抗癌剤(分子標的薬など)とか重粒子線治療とか、技術的な変化はあっても、同じパラダイムのなかの変化であって、患者にとって有害無益な治療であることは変わりない。

コールタール塗布によって癌細胞の作成に成功したという山極博士の発明は、本来であればノーベル賞級の発見だった。この発明のおかげで、飛躍的に癌研究が進歩することになったのだから、人類への貢献は計り知れない。
しかし、この発明を断じて容認できない人たちがいた。
石油および石炭由来の製品の販売によって、莫大な富を得ている人たちである。
西洋医学の薬というのは、ほとんどすべてが石油や石炭からできている。石油から精製したベンゼン環や石炭の乾留から得たコールタールに、様々な修飾をほどこして、多様な薬効を持つ薬を作り出し、人々に売るのが彼らの仕事だった。
だから、コールタールによって発癌させることに成功したという山極博士の発明は、彼らにとっていかにも不都合だった。
『自然療法による癌の治癒』を認めることも、彼らには到底できかねることだった。
こうして、今なお、僕らは体にいいはずもない薬を飲み続け、癌の標準治療を受け続けている。

癌治療1

2019.3.17

先進国では癌による死亡は減少傾向にある。欧米では毎年おおよそ5%ずつ死亡数が減っている。
唯一、日本だけが癌の死亡数が増え続けている。
癌になるのは、十年前ほど前には3人に1人だと言われていた。それが今や、2人に1人だと言われている。
なぜか。
なぜ日本だけ、こんなに癌が増えているのか。

高齢化の影響?
なるほど確かに、高齢になるにつれ遺伝子変異が蓄積し、癌を発症する可能性が高くなる、と言われている。
実際、老衰で死亡した高齢者を解剖すると、あちこちに癌が見付かる。
しかしそうした癌はおとなしい。下手に検査で発見されて、抗癌剤で叩くようなことをしない限り、特に悪さはしない。
たとえばドイツ、イタリア、フランスでも高齢化が進んでいるが、これらの国で癌の死亡数は増えていない。

むしろ、検査のせいで癌が増えているのではないか、という話がある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15070562
『診断用X線による発癌の危険性~イギリスおよびその他14か国での評価』という論文。
診断用X線というのは、胸部レントゲン写真とかだけではなくて、当然CTも含んでいる。
衝撃的なのは、すべての癌に対して医原性被爆による発癌の占める割合が、日本では3%以上で、先進国で飛びぬけて多いことだ。
これは総合病院で勤務したことがある医者なら実感としてわかることだと思うけど、何でもかんでも、やたらめったら、CT撮ってるもんね。
救急に「おなかが痛い」って来た姉ちゃんがいた。ただの胃腸炎だろう、って思ったから「家に帰って安静にしてくださいね」で帰そうとしたら、上級医から待ったがかかった。
「一応CT撮っといて。念のために」
「なぜですか」
「胆石、アッペ、結石、急性膵炎。いろいろな可能性が考えられるから、それらを除外しなくちゃいけない。
急性膵炎で帰して、家で増悪して、君、責任とれるの?裁判になったらどうするの?」
若い女性だったから事前に妊娠の可能性の有無を確認し、CTを撮った。
結果から言うと、この人はやっぱりただの胃腸炎だった。無駄に被爆しただけのことで、この人にはCTなんて必要なかった。
「0.1%でも可能性があれば、その可能性を除外しなくてはならない」という大義のもと、そして訴訟のリスクを避けるという事なかれ主義のもと、医療現場ではCTがバンバン撮られることになる。
この上級医が特殊なのではない。むしろ、ガイドライン通りの医療を実践するスマートな医者だったと思う。
でも、こういう先生と分かり合うことって、なかなか難しいんだ。
点数がかさんで保険制度が崩壊する?知ったことか。被爆による発癌リスク?知らねえよ。
分かり合うことなんてハナからあきらめてたから、僕も勤務医時代には遠慮なくCTを撮った。良心の呵責を感じないよう、心の一部を麻痺させながら。
だからみなさん、病院なんてよほどのことがない限り、行くものじゃないですよ^^;

CTでなぜ癌になるのか?
これは活性酸素の影響だ。
放射線、毒物(薬、食品添加物、農薬など)、ストレスによって活性酸素が生じると、DNAに傷がつく。
そうして変異を起こした細胞が癌化するというのが、発癌のおおよそのメカニズムだ。
だとすれば、癌にならないためにはどうすればいいか。
まず、活性酸素を抑えることだ。
危険な薬や食品を摂取しない、放射線を避ける、といったことが重要だけど、この現代社会で暮らしている限り、完全に避けることは不可能だろう。
そこで、抗酸化物質の摂取が助けになる。
たとえば社内検診でどうしてもレントゲンを撮らないといけないとなれば、事前にビタミンCのサプリを摂っておいて、少しでも体内の抗酸化物質レベルを上げておこう。
検診の三日ほど前から、ビタミンC 1錠(1000mg)を毎食後摂っておくだけで、被爆のダメージは相当軽減されるはずだ。

トラネキサム酸

2019.3.16

風邪の人には、「水分摂って布団にくるまって温かくしていっぱい汗かいてください。あ、水分って言っても、ポカリとか甘いのはダメですよ。水かお茶ね」で終わり。
僕のほうでやってあげられることは、基本的にはない。
だって、風邪というのは治癒反応そのものであって、抑え込むべき『病気』じゃないから。
でも、患者のほうでは物足りない顔をする。
「病院というのは病気を治すところであって、病気を治すには薬でしょ?薬、何か出してよ」と顔に書いてある。
医者もサービス業。
患者の要望に応えることも重要だから、こういうときには極力害にならない薬を出してあげる。
まず、シナール。風邪にビタミンCは鉄則だ。
抗酸化を強める意味で、プロマック(亜鉛)もいい。適応外処方だけどね。
咳や痰とか呼吸器系の症状があるなら、ムコフィリン、ムコダインあたりが無難。Nアセチルシステイン、カルボシステイン、いずれも抗炎症作用、抗酸化作用があるから、風邪の治癒を早めてくれるだろう。
あるいは、トランサミン(トラネキサム酸)もいい。のどが痛い、という人にはテキメンに効く。
抗酸化作用があるのはもちろん、シミを消す美白作用もあるから、風邪が治ると同時にお肌がキレイになっちゃうかもよ^^

勤務医の頃、深夜当直してたときに来院した患者。どう見ても、ただの風邪。「病院来る必要ないよ。家で寝てることが一番の薬だろう」って本音では思うけど、上級医の指示に従って、ルーチン通りに採血したり抗生剤出したりしてた。風邪に抗生剤なんて、こんな有害無益な医療行為はないんだけどね。罪なことをしてたなぁ。

まず害をなすなかれ、が医者の基本。
そういう意味で、トランサミンなんてすごく使い勝手がいい。
薬の処方っていう、何か「仕事してる感」を出せて、しかも無害だから^^;
しかしこの薬は、調べれば調べるほど、いい薬だと思う。
トランサミンは、あえてざっくりいうと、必須アミノ酸のリジンみたいなもので、要するにサプリみたいなものだから、副作用はまずない。
肝斑(顔にできる茶色いシミ。ピルを服用する女性に多い)にも適応があって、美容系のクリニックに勤めている先生なら、使ったことのない人はいないだろう。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4235096/
肝斑患者50人に、1日2回、顔の半分にトランサミン3%溶液を塗り、もう半分にハイドロキノン3%溶液と0.01%のデキサメサゾンの混合液を塗ることを12週間続けてもらった、っていう研究(すげぇ実験だな^^;)。本文に比較写真があがってるけど、トランサミンで本当に改善しているね。
美容だけでなく、マジメ(?)な使い方としては、止血作用があるから、救急現場とかの重度の外傷、外科手術、重度の月経などに投与されている。

トランサミンを作ったのは岡本彰祐博士。
なんとこの先生、トランサミンだけでなく、イプシロン(抗プラスミン剤)、アルガトロバン(抗トロンビン剤)の発明者でもあるというんだから、血液内科医はこの先生に足向けて寝れへんぞー笑
日本よりもむしろ外国で適切に評価されている人で、「抗プラスミンの研究」でフランスの学者からの推薦でノーベル賞にノミネートされたことさえある。

「戦前、慶応大学医学部で生理学の講師をしているときに、召集令状が来ました。北支派遣軍に入り、河南省で栄養失調の研究に従事していました。
ところが当時、大陸で急性熱性ライ病が発生し、兵士らがライ性肺炎で死亡する事態が起こりました。私は血液生理学が専門でしたから、急遽、東京の第七陸軍技術研究所での勤務を命じられ、帰国しました。
ここでの研究で、ある酵素をブロックすれば結節ライは治るのではないかと仮説を立て、様々な実験をしていました。そのときに、東大薬学部の落合英二教授が合成したクリプトシアニン(虹波)という色素に、コリンエステラーぜ抑制作用を発見しました。つまり、虹波がハンセン病の筋麻痺をも改善することになるということを発見したのです。
この成果がきっかけで、私は酵素阻害剤の研究に目を向けるようになりました」

クリプトシアニンは、ルミンAという商品名で現在も販売されている。第三類医薬品だから誰でも買えるんだけど、下手な処方薬よりいい薬だと思う。値段が高いのが難点だけどね^^;ルミンAには抗アレルギー作用があって、この時期、花粉症の人には助けになるだろう。この抗アレルギー作用はヘルパーT2細胞を介したものだということが、最近論文で発表された。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0199666

プラスミンはタンパク分解酵素のひとつで、岡本博士はその阻害物質を追求した。
注射器で血を抜いて、それを試験管に移して放置すると、ゼリー状に凝固する。このときに働く主役が、フィブリノーゲンというタンパク質だ。
普通の血液では、その濃度は0.2〜0.4%であるが、非常に変動しやすく、細菌感染などの炎症が起きると数倍になる。
なぜだろうか。その生理的な意味は?
このタンパク質が、細菌の封じ込めに役立っているのではないか。
1946年にイギリスの研究者がフィブリノーゲンを急速に分解する酵素を発見し、これをプラスミンと名付けた。プラスミンの作用によりフィブリノーゲンが著しく減少すると、致死的な大出血が起きる。これを避けるために、「プラスミンの抑制物質」を探すのが、岡本博士の目標だった。
こうして精力的に研究を続けた岡本博士は、2系列3種類の新薬を世に出すことに成功した。
それも、そこらへんの取るに足りない薬ではなく、3種類の合計で年商100億円の売り上げを持続している薬だ。特にトランサミンは、WHOの必須医薬品モデルリストに収載されているし、イギリス軍や米軍でも常備薬として採用されている(軍隊で使われているということは、有効性の何より雄弁な証拠なんだよ)。

岡本博士は東京出身の慶応ボーイなんだけど、戦後は神戸大学の教授に招聘されて、そのまま神戸を終の住処とされた。
研究者として超一流だったことはもちろんだけど、教育にも非常に熱心だった。インドネシアの教育委員会のお偉いさんたちが、日本の教育モデルを学びたいと岡本博士にお願いしたとき、博士は彼らを連れて、灘高校や神戸大学附属中学校へ連れて行き、教育現場を案内した。
岡本博士が神戸大学附属中学校に来たとき、僕はそこの生徒だった。当時、「探究」という自由課題の授業があって、それを視察に来た岡本博士と、僕はすれ違っている。でももちろん、僕は博士を認識していない。
すれ違った25年後の今、博士が生前書いた本を読んで、彼の歩んだ人生の足取りを追いかけている。人生の縁の糸は、どこでどんなふうに交差してるか、わからないものだね。

参考:『岡本彰祐アンソロジー』岡本歌子編 築地書館