院長ブログ

真菌、コレステロール、癌22

2020.3.2

「もともと健康で、何ら体に問題はありませんでした。
仕事もバリバリできるし、妻や子供との関係性も良好。ジョギングをして、食事にも気を遣って、毎日充実した生活を送っていました。
状況が変わったのは、会社の健康診断でコレステロールが高いことを指摘されたこと。医師から、コレステロール降下薬を処方されました。
飲み始めてしばらくは、何も異常は出ませんでした。ただ、半年ほど経った頃から、何ともいえない体のだるさを感じるようになりました。
もちろん薬が原因だなんて、思いもしません。体にいいと信じて飲んでいますから。
寝起きがだるくなり、毎日のジョギングに行くのも差し支えるようになってきました。
それどころか、体を動かすこと自体がおっくうになって、トイレに行くのも面倒だとさえ思うようになりました。
一日中ぼーっとして、仕事のパフォーマンスが低下したのはもちろん、休日だって何もしたくありません。体を思い切って動かすと、妙な立ちくらみもある。
薬を1年半ほど飲み続け、全身の倦怠感は病的なレベルに達しました。異常さは、自分の体感としても家族の目からも、明らかでした。
食事、生活習慣を徹底的に見直しました。そしてようやく、原因として突き止めたのが、コレステロール降下薬でした。

なぜこんなことになったんだろう、と思います。繰り返す言うようですが、本当に、体調は絶好調でした。
健康診断は何も問題のない優等生でした。ただ、コレステロールが高いという、その一点だけを除いて。
それで、医者の勧めるがままに、コレステロール降下薬を飲みました。
僕がしたのは、それだけなんです。それだけで、仕事も続けられないくらいの症状になりました。

何だかやるせない気持ちです。
薬の処方前に、医者から特に副作用の説明はありませんでした。あとで知ったのですが、グレープフルーツと一緒に摂取してはいけない、とか、いろいろ禁忌があるんですよね。
そういう説明はなかったです。ただ、「筋肉痛がでるかもしれません」とだけは聞いていましたが、薬のせいでこれほどひどい副作用が出るとは思ってもいませんでした。

薬はやめました。でも、もう薬をやめて3か月が経ちましたが、まだ倦怠感は治っていません。
何とかならないでしょうか?
治療法を模索していくなかで、ネットでオーソモレキュラー療法のことを知りました。
プロテインを飲み始めましたが、いまいち効果は実感していません。というか、これまで調子の悪い日と小康状態を繰り返すようなリズムだったのが、プロテインを始めてから、ずっと調子が悪いように感じているのですが、気のせいでしょうか?」

僕のブログを読んでくれている人で、今日、当院を受診された。
スタチン(カビ毒)に対する解毒法は、いずれブログで紹介するつもりでいたが、この患者のように「何を飲めばいいのか、どうすればいいのか、とにかく早く教えて欲しい」という人がいることを思い知らされた。
手順を踏んで、と思っていたが、予定を前倒しして、下記参考文献の著者James Yoseph氏の勧める食事法を紹介しよう。

ただ、まず最初に、上記患者の誤解を解いておきたい。
オーソモレキュラー療法とプロテインの服用を混同されているところがあるが、オーソモレキュラー栄養療法の創始者(主にはホッファーとポーリング)は、別にプロテインパウダーを勧めていない。
このことは拙訳『オーソモレキュラー医学入門』(A.ホッファー、A.ソウル共著)を読んでもらえればわかる。「高タンパク(肉、卵、乳製品、プロテインパウダーなども含め)が体によい」という旨の記述はどこにも見出すことができないだろう。
それもそのはずで、著者のソール先生自身、”ゆるやかな”ベジタリアンなんだ。ゆるやかな、というのは、「動物性食品を食べないと決めているわけではなく、食べたいときや食べる機会があるときに、良質の肉を少量食べるスタイル」ぐらいの意味である。

一方、ベジタリアンとは真逆のアプローチとして、動物性タンパク質の積極的摂取を勧める考え方に、アトキンス・ダイエットやパレオ・ダイエットがある。
これらの源流はいずれも、1930年代のウェストン・プライス博士の仕事に行きつく。
世界中の原住民を実地調査した結果、プライス博士は「精製した糖質、穀物、加工食品の摂取こそが現代病の元凶である」と考えた。ここから多くの治療家が示唆を得て、”食における原住民への回帰”が説かれるようになった。この流れは、現代日本の高タンパク・低糖質食ブームにも脈々とつながっている。
1972年にロバート・アトキンス医師が提唱したアトキンス・ダイエットは世界中で一大ブームを引き起こし、イギリスでは300万人以上が、アメリカでは11人に1人が、この食事法を試したと推定されている。
なぜ、こんなに流行するのか?
答えは簡単で、「効果をすぐに実感するから」である。
特にアメリカにおいて、肥満は国民病である。精製糖質の習慣的な過剰摂取によって肥満に陥っている人がアトキンスダイエットを行うと、みるみる体重が落ちる。スリムになるばかりでなく、頭の働きもクリアになるだろう。体験者は、こんなに素晴らしい食事法はない、と喜ぶ。
しかし、である。
しかし、何らかの改善したい不調があってその改善を目指して行う治療食が、通常の維持食としてふさわしいかというと、また別の話である。
『体脂肪を減らすための高タンパク食~その機序と危険性』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4258944/
「高タンパク食には、満腹感をもたらし、かつ、体脂肪が減少するというメリットがあって、減量法として最近ますます人気が出ている。
では、なぜ、高タンパク食によって体重が減少するのだろうか?その機序は?
それは高タンパク食によって、以下のような変化が起こるためである。
・満腹ホルモン(GIP, GLP-1)の分泌増加
・食欲増進ホルモン(グレリン)の分泌減少
・食事の熱作用の増加
・タンパク質誘発性の糖新生による血糖値の安定化
しかし、いいことばかりかというと、そうではない。高タンパク食に取り組む際には、注意しておくべきこともある。
一般的な西洋食と並行して高用量の分枝鎖アミノ酸を摂取すれば、代謝性疾患を発症する可能性がある。
また、高タンパク食は体を酸性にするため、腎臓への負荷も増大する。さらに、エネルギー需要量が低い状態(ろくに運動しない状態)で過剰にタンパク質を摂取しては、余剰分はグルコールかケトン体に変換され(糖新生の働き)、エネルギー代謝が正に傾く。これは、高タンパク食の目的が体重減少にあるのなら、好ましくないことである」

どの食事法も人によって合う合わないがあるし、目的によって、ある状況では適切でも、長期的に続けるには不適切、ということは普通にあり得る。
万人に共通して勧められるのは、とりあえず「精製糖質(砂糖菓子や小麦など)を控える」ことぐらいで、そこから先は個々人の状況に合わせてベストな方法を模索する、ということになるんじゃないかな。
上記患者について言えば、スタチンはカビ毒である。このカビ毒が筋肉にアポトーシスを起こして、筋炎が起きているはずである。
一方、プロテイン(のみならず、乳製品全般)は、カビ毒汚染のリスクが極めて高い加工食品である(パウダー製造過程の加熱によって真菌本体は死んでも、カビ毒は失活しない)。プロテインが症状の緩和に効かないところか悪化させた可能性は、説明がつくと考えている。

長文になってしまった。
肝心のJames Yoseph氏の勧める食事法は次回こそ^^;

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)