院長ブログ

犬の話2

2020.1.30

犬の話をした前回の続き、というわけでもないけど、犬を飼っているおかげで罹患率の低下する病気がいくつかある。たとえばこんな論文。
『幼少期におけるペット(犬、猫)への曝露と、統合失調症あるいは双極性障害の発症リスク』
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0225320

「統合失調症や双極性障害などの重篤な精神障害は、人生の早い段階での環境曝露との関連性が指摘されている。たとえば犬や猫などの家庭内ペットとの接触は、幼少期における環境曝露の一要因である。
出生後から12歳までに犬か猫を家で飼っていたことと、後年統合失調症(あるいは双極性障害)の診断を受けることとの間に相関があるかどうかを調べた。これは、396人の統合失調症患者と381人の双極性障害患者、594人の対照群を使ったコホート研究である。
結果、幼少期に犬への曝露があることは、後年統合失調症の診断を受ける可能性が有意に減少した(ハザード比0.75)。さらに、出生直後および生後一年以内に犬に曝露していると、統合失調症の相対リスクが有意に減少していた。
犬への曝露と双極性障害の間には有意な相関は見出されなかった。また、猫への曝露は、後年、統合失調症、双極性障害、いずれの罹患リスクとも有意な相関がなかった。」

犬にはわかりやすいメリット(統合失調症の罹患率低下)があって、猫には特にそういうメリットがないという。
何かいかにも、犬らしい結果だし、猫らしい結果だと思う^^
でも猫好きにとっては、そういうメリットのあるなしは当然関係なくて、ただもう、かわいいから飼っている。僕も実家で猫を飼っているけど、飼い始めたのは僕が高校生のときからだから、幼少期の曝露、という意味では関係なさそうだ。

猫もときどき、飼い主への親愛の情として顔を舐めてくれたりするけど、頻度としては犬と全然比較にならない。
犬はもう、舐めまくってくるからね^^;ああいうのが、結果的に飼い主家族の健康にものすごく大きなメリットになっている。特に恩恵を受けるのは、腸内細菌叢(つまり免疫系)が形成期にある小さい子供だ。

幼少期から犬を飼っている人のアレルギー発症率が低いことは多くの研究が示している。たとえばこんな論文。
『幼少期のペット飼育が用量依存性にアレルギーのリスクを減少させる』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30566481
「幼少期のペット飼育によって、後年のアレルギー発症から幼児を守る、と示唆する研究は複数ある。そこで我々は、その関係性(生後一年以内の猫と犬の飼育と、後年のアレルギー発症)が用量依存性であるかどうかを調べた。
【結果】用量依存性の関係が見られた。つまり、生後一年以内の時点で、家庭内で飼っている犬や猫の数が多ければ多いほど、各種アレルギー症状(ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎)が少なかった。
アレルギーの罹患率はペットを飼っていない人では49%だったのに対し、5匹以上飼っている人では0%だった(P=0.006)。
【結論】7〜9歳の児童におけるアレルギー疾患の罹患率は、生後一年以内の時点で家庭内で飼っていたペットの数に応じて、用量依存性に減少している。これは、猫や犬がアレルギーの発症に対して予防的に作用する”ミニ農場”効果(“mini-farm”effect)を示しているものと考えられる」

清潔志向の行き過ぎが、現代におけるアレルギー患者の大群を作り出した。
病気の予防に対してするべきことは、消毒しまくることでもなく、ファブリーズを撒きまくることでもない。犬や猫を飼って、むしろテキトーに不潔にしておくことなんだ。
安保徹先生が言ってた。「トイレで用を済ませても手を洗わないこと。まず、そこからです」と。
普通の医者にはなかなかできないアドバイスだなぁ^^;