院長ブログ

美容整形

2019.7.4

「なんで美容に行ったかって?
一応これだけは言っておくけど、金に惹かれたんじゃないよ笑
収入は、まぁ標準的な医者よりはもらってる。でも全然割に合わない。
本当にもうけたいのなら、開業だよ。
もちろん、開業したからってうまくいくとは限らない。大手を向こうに回して成功するには、よほどの何かがないとダメだと思う。専門分野のなかで突出した腕があるとか、宣伝に充分お金をかけられるとか。
僕もできれば開業したいけど、正直それだけの自信がないから、〇〇(某美容クリニック)に勤めてる。

なんぼもらってるかって?えらい切り込んでくるなぁ笑
3と4の間くらいかな。でもはっきり言って、僕なんて全然だよ。美容やってる人の平均って、4と5の間って話だから。
でも君も知ってるように、1千超えたら手取りは大して変わんないよ。この国は累進課税で、稼ぐ奴がいじめられるようにできてるからね。

もうね、お金じゃないよ。本当に割に合わない。
全然労働に見合った収入じゃない。
専門は豊胸術だけど、何でもやってる。二重まぶたから脂肪吸引、植皮、ワキガ、ボトックス、ヒアルロン酸とか、いろいろね。
そうやって、月に25日、クリニックのために何でも屋として働いてる。
QOLは悪いな。家族ともっと一緒に時間を過ごしたいけど、なかなかね。
先月さ、僕の労働がクリニックの収入にどれだけ貢献しているか、ちょっと計算してみたんだよ。
そしたらね、ざっと4000万円だった。
僕の給料は固定プラス歩合で、歩合は売り上げの2%。4000万売り上げたからその2%でプラス80万円。
まぁ、ひどいよね。たったの2%だよ。4000万稼いでも、そのうち98%はクリニックの上前。
搾取されてる感がハンパじゃないよ。

しかしまぁ、聞かれたからこんなふうにグチが出たけど、本当は金のことは別にいい。女房子供を食わせるだけの金は稼いでる。
高級外車とかバカ高い腕時計とか、全然興味ないしさ。必要以上の金は、いらない。
知ってる?美容整形で使う薬とか道具って、オーダーメイドならともかく、ほとんどは二束三文の安物なんだよ。
で、そんな安物を使って、ビックリするような施術料をとる。もちろん、そこには技術料が含まれているわけだけどね。
安いものを高く売る。商売の基本だよね。そこは別に構わない。
ただ、仕事の何が苦痛ってさ、クリニックの方針で、効果がないような施術も売り込まないといけないところ。
たとえば、うちのクリニック、いびきにレーザーを使った治療をやってるんだけど、効かないよ、あんなの。エビデンスはない。でも患者は高い金を払ってる。
正直あんな仕事はやりたくない。

君はさっき、患者を本当に助けたいから栄養療法を始めた、って言ったよね。対症療法で症状をまぎらすだけの医療はやりたくない、毒みたいな薬を処方して威張ってるだけの医者にはなりたくない、って。
良心的だね。プロって、そういうことだと思うよ。
自分で言うのも何だけど、そこは僕も同じだよ。
せっかく仕事をするからには、患者の悩みを解決してあげたい。誇りが持てる仕事をしたい。
若い女性で、いびきに悩む人って意外に多いんだ。そういう人たちが、ネットで探して、レーザー治療を受けにうちに来る。そこの勤務医として「こんなの金のムダですよ」なんて言うわけにはいかない。効果がないとわかっていても、規定の施術をし、規定の料金を頂く。
胸が痛いよ。くだらねえ仕事してるなって思ってさ、自分が嫌になる。

なんで美容に行ったのか、ってことだけど、僕はね、変な話だけど、魔法を使いたいって思ってた。
昔テレビで、美容整形を真っ正面から取り上げた番組をやってた。ビフォーとアフターが激変するんだよ。本当に、生まれ変わったみたいにきれいになって。魔法のようだって思って、すごく憧れた。
僕もあんなふうに、女の子をきれいにする魔法を使って、それでその子の人生が変われば、すばらしいことだなって。
「腫れぼったいような一重まぶたが嫌いで、自分の顔が好きになれない」
「小さな胸がコンプレックスで、女性として誇りが持てない」
そういう人が僕の施術を受けて、自分に自信を持つようになる。そして恋愛に積極的になって、人生がどんどん拓けていく。
僕が自分の仕事にやりがいを感じるのは、自分のかけた魔法が成功したって思える、そういう瞬間なんだな」