院長ブログ

電子レンジ4

2019.7.3

「現在、電子レンジは何ら規制されることなく野放しに使用されている。この責任の一端は我々科学者にある。
我々の責務は、この状況に警鐘を鳴らすことだ。同時に、自然と調和した技術を開発しそれを社会に広めることだ。
技術によって自然と調和した便利な社会を作ることは可能なはずだと、私は思っている」
ハンス・ヘルテル博士の言葉である。
彼は、電子レンジによって加熱した食品が人間の血液および生理にどのような影響を及ぼすかを調べた最初の研究者である。
それは小規模ながら、非常に質の高い研究だった。
「極力多くの変数を減らすために、マクロビオティックの施設で暮らす8人に被験者として協力してもらった。
彼らは厳格なマクロビオティック食を実践していて、酒もタバコもやらない。8週間、私はそういう人たちと同じホテルで過ごした」
電子レンジで加熱したものを食べることで、どのような変化が生じるか。その変化は、非常に微妙なものかもしれない。
変化を敏感に検出するためには、他の変数は極力小さくしたい。
タバコ、酒、ジャンクフード、農薬、ホルモン剤、抗生剤、環境汚染などが影響しては、研究の結果をゆがめてしまうからだ。

採血データの異常は明らかだった。
電子レンジで調理した食品を食べると、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球の値が正常範囲内下限にまで低下した。
「この結果は、貧血傾向を示唆している。8週間の期間中、後半4週間でその傾向は一層顕著になった」とヘルテルは記している。
「そのように低下する項目がある一方で、コレステロール値は上昇していた」

水分子を含む物体にレーダーやマイクロ波を照射すると、その物体の組成が変化する。
それは、水分子(特に酸素分子)に加わった激しい摩擦熱(熱効果)による変化と無熱効果による変化である。
この変化によって生成した物質は、放射性分解化合物(radiolytic compounds)と呼ばれており、自然界に存在しない。
この放射性分解化合物は、電子レンジで加熱した食品中にも当然含まれている。

国の機関や一般の学会では、電子レンジによって生じる放射性分解化合物の量は、普通の加熱方法(煮たり焼いたり)で生じる放射性分解化合物の量よりも多くはない、とされている。
これは明らかに事実と異なる。
しかし不思議なことに、公的機関や一般の学会は実際にこの放射性分解化合物を調べる実験を行わないし、これを食べると採血データや健康状態にどのような異常が生じるかを研究しない。
そうしたなかで、ヘルテルが電子レンジの有害性を明快に示す研究を行い、広く公表したのだった。

1992年電子レンジの販売を担うスイス産業会(FEA)がヘルテルを裁判所に訴えた。
「被告(ヘルテル)の主張は事実無根であり、原告(FEA)は多大な風評被害を被った」というのが訴状の主旨である。
この裁判の結果は、どうなったか。
ヘルテルの主張は科学そのものなんだから、再現性もあれば普遍性もある。裁判に訴えられたところで、負けるわけがない。
そう思うでしょう?
違います。
あろうことか、ヘルテルに裁きの鉄槌が下された。
原告の訴えが通り、ヘルテルには箝口令が命じられた。「その研究結果を口外するな」というお達しである。

「真実を語った人は叩かれる」というのが世の常だ。
ヘルテルもその例外に漏れず、見事にしてやられた。
「科学が人を不幸にすることがあってはならない」という信念のもと電子レンジの危険性を告発した科学者は、巨大企業の圧倒的な資金力を前にして、一瞬で踏みつぶされた。
この姿が、僕にはライナス・ポーリングの姿とダブって見える。
本当に良心的な科学者は、世界中のあちこちに、きっといる。でもその声は、一般大衆の耳に届く前にかき消されてしまう。

そして僕らは今日も、当たり前のように電子レンジを使っている。
その危険性を知れば、加熱完了の「チーン」が、死の暗示、仏壇の前で聞く「チーン」に聞こえるはずなんだけどね。