院長ブログ

電子レンジ

2019.6.28

パニック発作に悩む若年女性。本やネットの情報を参考にして、やれることは一通りやった。鉄剤も飲んだしプロテインも飲んだ。その先生がいいと勧めるビタミンも片っ端から飲んだ。でも良くならない。途方に暮れて、当院に来院した。
僕を頼って来てくれたのはうれしいが、僕にだって「答え」があるわけじゃない。
「うーん、困ったなぁ。何で治らへんのやろうなぁ」と一緒に悩みつつ、答えを模索していくしかない。「ナイアシンもビタミンCもダメかぁ」
他に彼女が試していない手段は、あるにはある。脂溶性ビタミンはE以外まったく飲んでいない。有機ゲルマニウムもアダプトゲンも試していない。
試してみる価値はあるのだが、彼女の持参した血液データを見て、ふと、思うところがあった。
「ひょっとして、電子レンジをよく使いませんか?」
「使います」
「どれくらいの頻度で?」
「毎日です。使わない日はほぼないですね」
「家で料理するのは、ガス?それともIH?」
「IHですけど」
ここらへんかな。引き当てたかもしれない。ハズレかもしれないが、いったん試してみる価値はある。
「ひとまず、2週間だけでいいので、電子レンジを使うのをやめてみませんか。
2週間だけでいいです。それで何も改善しなければ、今まで通り、電子レンジを普通に使って頂いてけっこうです。ただし、この2週間はちょっと本気を出して、徹底して避けてください。外食も電子レンジで調理した料理が出るかもしれないので控えましょう」
「わかりました。よくなるのであれば、何でもします」
相乗効果が期待できる場合を除いて、同時に複数の変化はつけたくないのだが、「今のこのパニック感を少しでもやわらげるサプリはないですか」とのことなので、D3とK2、Aを勧めた。
2週間後。見違えるように回復していた。
「今まで悩んでいた症状がウソのようになくなりました。パニックがなくなったのはもちろん、妙な倦怠感や肩こりもなくなりました。もうすっかり良くなったので、病院に来なくていいような気もしましたが、お礼の気持ちもあったので、来ました」と笑顔を見せた。

変数が2つある。電子レンジの使用をやめたことと、脂溶性ビタミンを始めたこと。
どちらが奏功したのかはわからない。でも、結果オーライ。
僕は研究者じゃなくて臨床医だから、患者の治癒こそがプライオリティだ。患者が治れば万々歳。原因の究明や考察はひとまず後でいい。
脂溶性ビタミン、特にビタミンD3の認知機能への影響については、以前このブログでも書いたことがあるから、ここでは触れない。そこで今回は、電子レンジのことについて書こう。

ヘモグロビン低値、白血球高値(ただしリンパ球低値)、コレステロール低値(特にHDL/LDL比の低下)を見て、どう考えるか。
若年女性でヘモグロビン低値なら貧血を疑うところ。しかしこの患者は自分なりに勉強して、すでにいろいろやっている。鉄もビタミンB群もとっているから、小球性、大球性、いずれの貧血も考えにくい(ビタミンA欠乏性貧血の可能性は残っている)。
ここで、普通の医学部教育では教わらないが、実臨床ではぜひ知っておきたい貧血がある。『電子レンジ誘発性貧血』である。

スイスの科学者ハンス・ヘルテルが1991年に行った以下のような実験がある。
被験者に以下のような食事を空腹時に食べさせる。
(1)生乳(2)従来の方法で加熱した牛乳(3)低温殺菌した牛乳(4)電子レンジで加熱した生乳(5)有機農場で採れた生野菜(6)従来の方法で加熱した野菜(7)いったん凍らせた後電子レンジで解凍した野菜(8)電子レンジで加熱した野菜
一つの食事を食べたら、2〜5日の間隔を置いて、次の食事をとらせるようにした。各食事の前後には採血を行った。
結果、電子レンジで加熱した食品(以下、チン食品とする)を摂ったときに被験者に見られたのは、上記の変化、ヘモグロビン低値、白血球高値(ただしリンパ球低値)、コレステロール低値(特にHDL/LDL比の低下)である。
同時に、被験者から採った血液を、発光バクテリアを使って評価した。発光バクテリアは、チン食品を摂取した被験者の血液に触れると、有意に強い発光を示した。この発光の強さは、食品に照射したマイクロ波の量と有意に相関していた。

こうした結果を踏まえて、ヘルテルは以下のように考察した。
「白血球数は、採血の時間帯によって多少日内変動しているものだが、チン食品を食べた後の増加は、それでは説明のつかないほど大きかった。
この白血球増多は体の生理に基づいたものであり、すでに他の文献でも示されている。発光バクテリアを使った研究は、それを裏付けただけのことだ」
以下、ヘルテル博士非常に興味深い考察が続くのだけど、長いので省略。

ただ、ちょっと触れておきたいのは、電子レンジは英語で”microwave oven”という。つまり本来、マイクロ波オーブン、とでも訳すべきものだ。あまりにもナマナマしいから、訳語として採用されなかったんやろうねぇ。実際、電子レンジは、マグネトロンを使って電磁場を起こし、マイクロ波を食品に照射することで分子同士の摩擦を引き起こし、加熱する仕組みだ。

ヘルテル博士は、マイクロ波を照射した食品を食べることによってだけでなく、生体に直接マイクロ波を照射することによっても、大きな悪影響があると指摘する。
これから、4Gから5Gの時代になって、町の中を行き交うマイクロ波の照射量が飛躍的に増大することになる。すると、どうなるか。
レーダーが開発されて以後、レーダー(マイクロ波)の人体に及ぼす影響は1950年代のロシアで精力的に研究された(この研究を踏まえ、健康への影響を重く見たロシアでは、長らく電子レンジの使用が禁止されていた)。
まずマイクロ波照射による最初の兆候は、低血圧および徐脈である。慢性的に照射を受けると、今度は交感神経が興奮し、高血圧になる。そして、頭痛、めまい、眼痛、不眠、イライラ、不安、胃痛、神経質、集中力低下、脱毛などの症状が現れる。具体的な病態としては、虫垂炎、白内障、生殖障害、癌の発生が増加する。慢性症状が続くと、副腎疲労、虚血性心疾患が起こる。
5G導入後には、当院に来る患者にも、こういう主訴が増える可能性を当然念頭に置いておくべきだろう。

何が一番問題かといって、電子レンジやマイクロ波が病気の原因になり得ることを、医学部でまったく教えていないことだ。教わってないんだから、鑑別に挙げようがない。医者は自分で論文にあたって学ぶしかない(医学部を出てからが、本当の勉強だ)。
しかし仮に病気の根っこの原因が電子レンジだったとしても、そういう患者が栄養療法を始めた場合、完治とはいかずとも多少改善する可能性はあると思う。たとえばビタミンCが抗酸化やデトックスの働きをして、根本的な原因にアプローチしてないものの、症状を抑えてくれるかもしれない。でもこれは、長期的には微妙なことだね。だって、この患者はなまじっか回復したばかりに、電子レンジが病気の原因とは疑いもせず、ずっと使い続けるだろうから。
文明の利器の目に見えない悪影響っていうのは、何とも困ったもんやね。

参考
https://pdfs.semanticscholar.org/53a1/d37f97fb2115db9fbe449793fd6897235cc5.pdf