院長ブログ

心と栄養

2019.2.20

以下、Mark Hymanの著書”The Ultra Mind Solution”の一節(p80)からの引用です。訳はかなりテキトーです^^;

ジョーは自分では特に病気ではないと思っていた42歳の男性だが、4種類の精神科的投薬を受けていた。
うつっぽい気分だということでレクサプロ、集中力が続かないということでコンサータ、不安に対してザナックス(アルプラゾラム)、寝るためにアンビエン(ゾルピデム)を飲んでいた。
初診から数年のうちに、一つまた一つと種類が増えていったのだ。また彼は、喘息の薬と抗生剤の処方も受けていた。彼の身体症状としては、乾癬、胃酸逆流、過敏性腸症候群、慢性後鼻漏があった。
性欲は低下していて、いつも肛門周りがかゆかった。ある種の食べ物を食べると、舌が腫れて痛くなった。甘いものへの衝動が強く、食べてしばらくすると力が抜け、ひどい低血糖症状に襲われるのだった。
彼は標準体重よりもおよそ25ポンド(11キロ)太りすぎで、彼の中性脂肪は500を超えていた(正常値は100以下)。脂肪肝があり、糖尿病の前駆症状、メタボリック症候群も見られた。
ジョーの食事は理想的とは言い難いものだった。朝食にはコーヒーを飲みつつ、ベーグルとプロテイン・バーを食べた。昼は、チーズをたっぷりはさんだターキー・ラップ(鶏肉のサンドイッチみたいなの)、ダイエットコーク、チップス。夜は多少マシだったが、パン、パスタ、じゃがいもをたくさん食べ、食後には思いのままにスィーツをむさぼった。睡眠時間は5,6時間だった。
1日にワインをグラスに二杯、コーヒー三杯、それに数えきれないほどのダイエットコークを飲んだ。
彼の腸には炎症があり、数年の抗生剤使用の影響で寄生虫やカンジダ菌の過剰増殖を来していた。これが原因で、小麦やライ麦(グルテンを含む主要な穀物)に対する過敏症を起こしていた。
欠けている栄養素としては、ビタミンB12、葉酸、ビタミンD、クロム、オメガ3脂肪酸である。これらはみな、気分に影響するし、代謝を健全に維持するのに欠かせないものだ。
私がしたことは、彼の病気や問題のひとつひとつに対症療法をするのではなく、彼の生活のアンバランスを立て直すサポートである。
まず、取り組んだのは、食事の改善である。精製した炭水化物や砂糖の摂取を止め、食物繊維やオメガ3脂肪酸を食べるよう勧めた。さらに、彼の腸に炎症を起こす原因になるグルテンや乳製品をやめさせた。
コーヒーも極力控え、ワインはやめた。運動を始め、もう少し長く寝るようにした。
マルチビタミン(クロムを多く含むもの)、フィッシュオイル、プロバイオティックス(健康な腸内細菌叢のために)を彼に投与した。
遺伝的に多く必要だと考え、葉酸とビタミンB12を高用量で追加した。さらに、気分と免疫系の改善のため、ビタミンDを高用量で与えた。寄生虫とカンジダの増殖に対しては、短期間の投薬で治療した。
3か月後、彼は25ポンドやせていた。中性脂肪は597から80に低下し、コレステロールは275から198に低下した。葉酸とビタミンB12は正常値になった。
空腹時血糖は101から84に低下し、血中インスリン濃度は正常値に戻った。脂肪肝は治癒していた。そして彼の気分は?
胃酸逆流を抑える薬はもういらなくなっていたし、喘息の薬の吸入も不要になった。身体症状は自然と軽快していた。
私が指示したわけではないのだが、彼は4種類の精神科的投薬すべてをやめていた(むしろ私は、一気にやめないようにと言っていた)。
「もう寝れますし、特に不安や抑うつを感じることもありません。仕事にも集中して取り組めるので、もう薬は要らないと思ったので、やめました」
喘息や胃酸逆流は、治らない病気ではない。これらには原因がある。
たとえばグルテンや乳製品などに対する過敏性が原因のこともあれば、腸内細菌叢のアンバランス、あるいは粗悪な食生活が原因のこともある。
うつ(および不安、不眠、集中困難などの精神症状)の発症には栄養が関係している。
食物アレルギーや腸内細菌のみならず、食事に含まれる砂糖、栄養欠乏(葉酸、ビタミンB12、ビタミンD、オメガ3脂肪酸など)が問題であって、レクサプロの欠乏が問題の根幹では決してない。
よからぬものを取り除き、バランスを取り戻すものを与える。これだけのことなのだ。
これだけのことで、患者は目を見張るような回復をする。ジョーの治療経験を通じて私は再度そのことを確認した。

マーク・ハイマンという人は、特にオーソモレキュラーという看板を掲げている人ではないけど、やっていることは要するに栄養療法だ。
著作以外にフェイスブックなどでも積極的に情報発信している人で、僕も勉強になるので彼をフォローしている。
「うつ、不安、記憶力低下、ブレイン・フォグ(頭のなかが霧がかった感じ)、ADHD、自閉症など、脳の機能障害は多くの名前で呼ばれているが、それらは症状の表出の多様性にすぎず、結局根本の問題は同じ」
これが彼の主張で、僕も確かにそうだと思う。
でも、一般の医療はそういうふうに考えない。症状に応じて細かく病名を付け、それぞれに対し各製薬メーカーが薬を作っている。
しかしそうした薬はあくまで症状を抑えるだけのもので、根本の原因に目を向けたものではないから、当然治らない。そればかりか、結局病態を複雑化させることにしかならない。
心の病気を治すことは、そんなに大変なものなのだろうか。
ハイマン氏はこう考える。
「よからぬものを取り除き、バランスを取り戻すものを与える。これだけのことなのだ」
そう、たったこれだけのことで、不調は改善する。
人間の体は、もっとシンプルなものなんだよ。