院長ブログ

緑内障

2018.8.19

緑内障は失明する原因のなかで最多であり、恐ろしい病気だ。
ところでみなさん、緑内障とはそもそもどういう病気か、知っていますか。
「眼圧が上がる病気だろ」
そう、基本的にはその通り。
眼科医以外の一般の医療者の認識もその程度のものだと思う。
「視神経の変化や特徴的な視野変化があり、眼圧の降下によりその進行を阻止できる病気」というのが緑内障の定義なんだけど、眼底検査でいかにも緑内障らしい所見を示しているにもかかわらず、眼圧の上昇がない患者(正常眼圧緑内障)もざらにいる。
こういう患者では眼圧を下げても病気の進行が止まらず、失明まで一直線という経過をたどることも多い。この場合、一般的な医学では打つ手がないというのが正直なところで、だからこそ緑内障が失明原因の第1位なわけだ。

「緑内障が進行してどんどん視野が狭くなっていく。どこの医者にかかっても治療法はないと言われる。このままだと失明してしまう」という患者には、栄養療法的な立場からは、ぜひともナイアシンを勧めたい。
眼圧を下げても病勢が止まらない難治性の緑内障に対して、ナイアシンは症状の進行を抑制し、不可逆とされている治癒さえももたらす可能性がある。(http://science.sciencemag.org/content/355/6326/756)
この文献はマウスを使った実験なんだけど、研究者によると、緑内障の症状がはっきり出現する前に、すでに神経細胞でのミトコンドリア機能に異常が見られている。
そもそも加齢に伴って体内のNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド。要するに、ナイアシン)濃度は減少していくもので、このせいで神経細胞がダメージを受けやすくなってくる。ナイアシンは緑内障の予防、治療、両方に有効だし、もっと広く、加齢に伴う抗酸化力減少が引き金になる神経変性疾患全般に有効だ。

少し前のニュースに、「緑内障による失明の背景に、免疫が関与している可能性」という記事があった。(https://www.medicalnewstoday.com/articles/322759.php)
眼圧の上昇がT細胞の異常な活性化を促し、結果、ある種の免疫異常起こすのではないか、という。
「緑内障は自己免疫疾患だ」などと言えば、どの医者も相手にしないだろうけど、それが研究結果の示唆するところなんだから、しょうがない。
ナイアシンにはゆるやかな抗アレルギー作用がある。ナイアシンが緑内障に有効であることは、この記事の傍証になっているようだ。

さらに最近のニュースから。
(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/08/post-10772.php)
緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症という、失明原因のトップに出てくる病気が、皆、アルツハイマー病と関係しているという話。
具体的には、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症のいずれかにかかっている人は、そうじゃない人に比べて、アルツハイマー病にかかる確率が40%から50%高かったという。
目は脳の出先機関、あるいはほとんど「脳そのもの」だ。このニュースは「目の異常はやっぱり脳の異常と関連してた」っていうことで、それほどの新味はないんだけど、統計的にはっきり示されたということには一応の意味があると思う。
アルツハイマー病は脳の糖尿病、という話もあるぐらいだから、糖尿病性網膜症とアルツハイマー病の相関はもはや当たり前だろうけど、緑内障や加齢黄斑変性もアルツハイマー病に関連していたというのは興味深い。
アルツハイマー病の人に対して、栄養療法的なアプローチとしては、糖質制限を指導し、ミトコンドリア賦活作用や抗酸化作用のあるサプリメントを勧めるんだけど、このニュースはそういう栄養療法の正しさを裏付けているようだ。

失明する前に、栄養療法を試してみよう。
リスクもほとんどないんだし、やってみる価値は十分ありますよ。
あと、化学調味料が緑内障の原因じゃないかという話もあるから、緑内障の人は味の素は控えめにね。