院長ブログ

性的な

2018.8.18

健康とは何か。
WHOの定義では、「身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であること」とあるけど、抽象的すぎると思う。
もっと平たく、「ご飯が食べれて、ちゃんと眠れて、エッチもできて」っていう、人間の三大欲求が満たせてる状態、と定義するほうが便利じゃないかな。
何が便利って、臨床的な判断基準として使えるんだよね。
たとえばうつ病になると、食欲が低下して、不眠になって、エッチする気も何する気も起こらなくなることが多い。逆に、うつ病が治ると、そうした症状は軽快する。
三大欲求は健康のバロメーターなんだ。

ただちょっとした問題は、臨床現場でエッチについてはあからさまに聞くのは、何となくはばかられる、ということ。
主訴が男性の勃起不全とか女性の性交痛であった場合はさすがに患者からすすんで語ってくれるだろうけど、そうでもない限り、患者のほうから積極的にしゃべる話じゃない。
主訴が内科的なことや精神科的なことであっても、実は性的なことにも悩んでいる、というケースは思いのほか多いものだ。
夫婦間でパートナーのいずれかに問題があって性生活ができない状況というのは、離婚の危機にもなり得る。性生活の不一致、というのは、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として裁判でも認められているぐらいだからね。
エッチができるできないというのは、一般の人が思う以上に重要な問題なんだ、マジメな話。

性的な事柄が主訴であった場合、どのように対応すべきか。
男性の場合、「バイアグラ出してくれ」とズバッと商品名出して注文されることがある。それがご希望とあればもちろんそれに応じるんだけど、黙って処方してあげればいいところ、僕も一応栄養療法をかじっている身。西洋薬以外のチョイスがあることも提示することにしている。
それは、アダプトゲン、特にロディオラである。
ロディオラは、即効性の点ではバイアグラに負ける。でも劣っているのはそこだけで、それ以外の点では断然ロディオラに分があると僕は思っている。
まず、副作用。ロディオラには副作用がほとんどない一方、バイアグラには頭痛、紅潮、胃もたれ、一過性色覚異常などがある。それに、狭心症などニトロ系の薬を飲んでいる人がバイアグラを飲むと、致死性の不整脈が起こる可能性がある。
次に、薬価の高さ。バイアグラの値段は、クリニックによりばらつきはあるだろうけど、1錠あたり千数百円ぐらいする。一方のロディオラは1錠数十円。バイアグラは体への負担のみならず、財布にもけっこうな負担になる。
さらに、性的興奮の性質の違い。バイアグラを使っている人の感想を聞くと、「これは確かに効く。もう使い物にならないと思っていた自分のモノが、確かに固くなる。これには最初、感動した。でも慣れてくるにつれ、その不自然さに気付き始めた。確かに固くなるけど、でもそれだけなんだ。単に固くなるだけで、そこには感情の高まりがない。どっちかというと、気持ち的には冷めているのに、股間のモノだけはギンギンという状態って、むしろ不愉快なんだ」
では、ロディオラがもたらす性的興奮はどのようなものか。「ロディオラは、ただ股間を固くさせるだけではない。きちんと感情を高めてくれる。パートナーを愛しく思って、その結果、股間が固くなっている、という感じだ。物語をくれる、とでも言おうか。バイアグラの即物性、『自分』が不在の勃起に比べると、ロディオラによる勃起には、確かに『自分』がある。ちゃんと自分がセックスしているんだ、という実感がある。中学生のときに感じたような、あのどうしようもない胸の高まり、せつないような気持ちを、この歳になって思い出したよ」

バイアグラを飲んでも女性が性的に興奮することはない.
(https://www.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/152460902317586001)
つまり、女性の性的な問題に対してバイアグラは無力だが、ロディオラは女性の性的な悩みの解決にも有効だ。
スカンジナビアのある地域では、村で挙式をあげた新婦にロディオラのブーケが贈呈される。村の人々は皆、その意味を知っている。ロディオラの有効性に科学のメスが入ったのは最近のことだが、村の伝統的な知恵はそれが多産もたらすことを知っていたのだ。

エストロゲンとプロゲステロンのアンバランス。膣乾燥。そこから来る性交痛や、その結果としての性欲低下。こうした女性特有の症状に対して、ロディオラは、テストステロンを増やすことで作用する。
テストステロン?
そう、テストステロンは男性だけのホルモンではない。女性の卵巣でも産生されている。さらに、副腎皮質からのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA。テストステロンの前駆体)の産生増加を通じて、女性はいわば「肉食」になる。
この過程で、「最近妙に疲れやすいな」といった副腎不全症候群の症状も同時に軽快するはずだ。

主訴が何であれ、その主訴を抑えるだけ、というのが西洋医学の薬にありがちなパターンだ。「熱が出てしんどいんです」という主訴に対して、解熱薬を投与すれば、なるほど、熱は下がるだろう。確かに、患者の訴えを汲み取り、それに対処した。でもそれが根本的解決になっているかというと、全然なっていない。患者は再び発熱するだろう。
ビタミンやアダプトゲンを使った栄養療法は、一見回り道かもしれないけど、結局のところ根本治療につながっていて、主訴にはなかった症状もついでに解決してくれることが多い。
「閉経してから、吹き出物が多くなって」という50代の女性にロディオラを含むサプリをオススメしたところ、2ヶ月後、吹き出物が改善したのはもちろん、「夫婦仲もよくなって」と僕も本人も思いもよらないオマケがあった。
根本がよくなるから、それに伴って他の不調もいろいろ治るっていう、こういうのが本当の治療だと思うんよね。