院長ブログ

認知症

2018.7.24

認知症に対する漢方的なアプローチとしては、抑肝散が有名だけど、これを公式のように「認知症=抑肝散」と棒暗記するのはいまいち。
興奮とか易怒性を伴うタイプの認知症にはバッチリハマるけど、活動性が低下したような認知症には、陰性症状に拍車をかけてしまい、逆効果になる。
アパシーが前面に出ているような認知症には人参養栄湯がいい。
人参養栄湯は統合失調症の陰性症状にも有効だし、食欲不振、倦怠感、手足の冷え、寝汗にも効く。
レビー関連型の認知症で、パーキンソニズムとか抑うつのある人には、柴朴湯が向いている。
という具合に、一口に認知症といってもタイプは様々なので、タイプに応じた漢方処方をすることが必要だ。
大まかに言って、人参養栄湯と抑肝散は逆の働きをしているから、活動性が低下している認知症、陰性症状メインの統合失調症には人参養栄湯を、活動性が高まっている認知症や陽性症状が出ている統合失調症には抑肝散、とおさえておこう。

漢方に加え、サプリや食事改善も含めたアプローチにより、認知症(特にアルツハイマー型)のほとんどはよくなるよ。
このあたりの事情は『アルツハイマー病 真実と終焉』(デール・ブレデセン著)に詳しい。
家族に認知症患者のいる人は、ぜひ読みましょう。
認知症は不治の病ではなく、治る病気なんだ、予防可能なんだと知れば、認知症患者は治癒に希望を持てるし、自分も将来認知症になるのではないかと不必要に恐れることもなくなるからね。

認知症に対して、一般の病院ができることといえば、せいぜい薬(ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロン、リバスタッチ)、メマンチン(同マリー))を処方することぐらいだけど、たとえばアリセプトの添付文書には、このような文言がある。

「効能又は効果に関連する使用上の注意
・アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
(1)本剤は、アルツハイマー型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
・レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
(1)本剤は、レビー小体型認知症の臨床診断基準に基づき、適切な症状観察や検査等によりレビー小体型認知症と診断された患者にのみ使用すること。
(2)精神症状・行動障害に対する本剤の有効性は確認されていない。
・両効能共通
(1)本剤がアルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない。
(2)アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症以外の認知症性疾患において本剤の有効性は確認されていない。」

この説明、納得できる人、いますか。
「症状の進行抑制」という前段の記述と、「病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」という後段の記述。何ですかこれ。
矛盾以外の何物でもなくないですか。少なくとも僕の国語力では読み解けません。

効かないんだよ、正直。製薬会社はそんなこと、百も承知。
自社製品なんだから、強みも弱みもはっきり理解したうえで、市場に出している。
でも「認知症を治します」なんて謳っちゃうとあからさまな詐欺だから、言えない。そこで、このような禅問答みたいな表現をしている。
まぁ要するに、バカにしてるんですね、患者のことを。

こういうデタラメが通じるのは日本だけで、さすがフランスはしっかりしている。
認知症に効かないということが明らかな以上、こんな薬に保険適用を認めるわけにはいかないと、今年の8月から抗認知症薬が保険でカバーされなくなった。
莫大に膨らむ医療費を抑えようとするのは国家として当然のことで、フランスがすごいというか、日本の医療行政が無策すぎるだけなんだよね。