院長ブログ

CA

2018.7.17

「国内線のCAとして働いて来ました。大学を卒業してから、十年近くずっと。
CAの仕事を通じて、接客のマナーとか航空会社のシステムとか、会社で働くことの意味、お客様に喜んでもらう喜びなど、様々なことを学びました。
でも、もういいかな、と思いました。長く続ける仕事じゃないな、と。
いえ、仕事が激務だから、というわけではありません。確かに大変な仕事でしたけど、やりがいもありましたから。
私の場合は国内線だから、フライトが長時間だったり変則的だったり、っていう負担はそれほどありませんでした。多いときで、1日3フライトというときもありましたけど、国際線のCAに比べれば全然楽なほうだと思います。
それに、会社は過重労働にならないよう配慮してくれているように感じました。フライト中にもレストがあって、それは権利というか、むしろ義務でした。「何時間働いたら、何分休憩しないといけない」っていうのが、労務管理としてあるんだと思います。
そういう点は問題ありませんでした。
問題は、飛行機に日常的に乗ることから来る健康への影響で、こればかりはこの仕事を選んだからには避けられないものでした。
気圧の高い低いの繰り返しとか、機内の乾燥した空気、放射線への被爆とか、やっぱり心配だと思って。
あと、クルーミールって、お客さんにお出しするものと基本的には同じなんです。できあいの加工食品そのもので、それをアルミに包んでオーブンであたためて、食べます。
濃い味付けで、栄養のバランスなんてあったものじゃない。毎日食べ続ける食事ではありません。自分でお弁当を作って持って来ている同僚も珍しくありませんでした。
小さい頃から、車や電車、飛行機とか、乗り物が好きでした。その気持ちがあったから、CAになりました。CAをやめた今でも、車の運転とか、好きです。
でも今の車ってすごいんですよ。私のじゃなくて親のだけど、家がベンツのEクラスに乗ってて、オートパイロット機能で勝手に運転してくれるんです。飛行機の運転も離着陸を除けば、ほぼ自動化されているんだけど、まさか車で運転の自動化ができるなんて思いませんでした。先生はどんな車に乗られてるんですか」
「軽です」
「(うわ、だっさ)軽も素敵ですよね」

職業として飛行機に長く乗り続ける人の健康がどうなるのかについては、昔から研究されていることではあった。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK219002/)
ごく最近、かなり気合の入った論文が出てきたので紹介する。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5865289/)
この研究によると、一般の人に比べて、CAが婦人科系の癌にかかる確率は1.66倍、部位を問わず何らかの癌にかかる確率は2.15倍であり、睡眠障害、疲労、うつ病にかかる確率は、1.98倍から5.57倍高かった。
逆に、心血管系、呼吸器系疾患にかかる確率は低くなっていた。
職歴が長いほど、睡眠障害、不安・うつ病、アルコール依存、癌、末梢動脈疾患、副鼻腔炎、下肢手術、不妊、周産期疾患にかかる確率が増加した。

上空何千メートルという空の上が職場なわけで、こういう環境はやっぱり人間が過ごすには不自然なのだということが、病気の発生率の増加に表れていると思う。
だから上記の女性が、せっかく子供の頃からの憧れのCAになったのにもかかわらず、自分の健康を気遣って職を辞める決断をしたのも、賢明な判断だというべきだろう。
今後AIが進歩すれば、CAは不要という時代は来るだろうか。
それはわからないが、こういうエビデンスが出てなお、航空会社としてはCAを廃止するわけにはいかないし、CAのほうでも健康リスクを承知の上で「働き続けたい」と希望する人も多いだろう。
そういう場合に、栄養療法的にお手伝いできることがある。
国際線のCAには、睡眠障害はほぼ必発で、狂った睡眠リズムを整えるためにベンゾジアゼピン系の睡眠薬を使っている人も多いと思われるが、そういう人には、ベンゾではなくメラトニンを勧めたい。
ベンゾの長期使用は癌の発生率を増加させるが、メラトニンには睡眠リズムの適正化に加えて、むしろ抗癌作用が期待できる。
CAをしていることでなぜ婦人科系の癌が増加するのか、詳細は不明だが、ホルモンの分泌不全が病態の根本にあるのではないか。だとすれば、婦人科疾患の女性によく用いるビタミンB6と亜鉛の服用もプラスの作用が期待できそうだ。
過酷な機内環境であるから、抗ストレス作用を期待して、アダプトゲン(特にロディオラ、睡眠障害のある人にはアシュワガンダ)を使ってもきっと効果があるだろう。

車好きの女の子というのは確かにいて、乗ってる車が軽ではそういう子にまったくアピールしない、ということを、相手の表情で如実に知りました泣