かつてアメリカにドクター・セイビー(本名Alfredo Bowman 1933~2016)という人がいた。
「ドクター」という呼称ではあるが、正式な医学教育を受けたわけではない。
ハーブの効用などを独自に研究して自らの治療哲学を打ち立て、多くの患者を病気から救った。
たとえば癌や膠原病、エイズなど、現代医学では治癒が困難とされる難病さえ治したという。
地元の人に細々と健康アドバイスをしていた彼だが、実際に治癒した患者やその家族から口コミで評判が広まった。
1980年代にはニューヨークで「知る人ぞ知る」といった存在になった。

彼の治療哲学を簡単にまとめると、以下のようになる。
・すべての病気は、粘液(mucus)より生じる。
たとえば粘液が蓄積したのが肺であれば肺炎に、膵臓に蓄積すれば糖尿病になる、といった具合。
・体内をアルカリに保つことができれば粘液は生じず、従って病気にならない。
つまり、病気は体が酸性に傾くことによって生じるのであって、アルカリ環境下では存在し得ない。
この二点がドクター・セイビーの基本テーマである。

現代の病気の多くは、食のゆがみから生じる。
動物性食品や人工的に精製した植物、加工食品などが体を酸性にし、粘液の蓄積を促し、体を病気にする。
病気の治療や予防のための食事として、ドクター・セイビーは次のような食事指針を示している。

1.以下の表に記載された食物をのみ食べること。
2.毎日1ガロン(3.8リットル)の水を飲むこと。
3.薬を飲む人は服用1時間前に「ドクター・セイビーのサプリメント」を飲むこと。
4.動物性食品は摂らないこと。
5.アルコールは禁止。
6.小麦の摂取は避け、表に記載された「自然に育った穀物」のみを食べること。
7.電子レンジは食品を「殺す」ため、使用を避けること。
8.缶詰および種無し果物を避けること。

一般的な医者がこの食事指針を見れば、特に2.と3.に対して、相当な拒否反応を示すはずだ。
西洋医学を実践する医者からだけでなく、栄養療法を実践する医者からさえ、批判の声が出てきそうだ。
「水を1日4リットル近くも飲めだって?あきらかに飲みすぎだ」「東洋医学的に言っても、過剰な水の摂取は水毒となって体を冷やす」
「動物性食品がダメってさ、ただのビーガンじゃないの」「肉や魚などが含む動物性タンパク質やビタミンの効用を軽視している」
3.に対しても、「自社製のサプリを売り込もうってのか。なかなかの商売人だね」

いろいろな批判があるだろう。
実際、ドクター・セイビーの理論の正しさを科学的に検証した研究は存在しない。
しかし理屈はともかく、彼の食事指針を守ることで、エイズ、鎌状赤血球貧血、白血病、SLEなどの多くの難病患者が病気から回復し、健康を取り戻してきたことも事実だ。
「表に記載の食品のみを食べ、かつ、私の配合したサプリメントを摂取することだ。これによって、体内をアルカリに保って粘液を減らし、結果、病気を治すことができる」
実際に治療実績のある人の言葉だけに、傾聴する意味はあると思う。

そう、ドクター・セイビーは多くの患者を救ってきた。
しかし妙な話だけど、「結果を出している医療だけに、その存在が許せない」という一部勢力がいる。
1987年ニューヨーク州医学委員会は、彼を「医師免許なしに医療行為を行った」として訴えた。
これに対して立ち上がったのは、彼によって救われた患者たちである。
「ドクター・セイビーは医療を実践しているのではない。我々に精神的助言を与え、食事法を示唆しているだけだ」
結果、検察は彼を有罪にすることができず、無罪放免となった。しかし何としても彼を陥れたい一部勢力は、あきらめない。
今度はニューヨーク弁護士会が彼を「消費者に対する詐欺罪」で訴えた。
原告の訴えが通り、サプリの販売に際して、治療効果を記載することが禁止された。

こうした裁判が起これば、「インチキ療法を実践するニセ医者が訴えられた」と新聞が大々的に取り上げる。
一部勢力に牛耳られたマスコミは、彼が無罪放免になったことは報道しない。
ドクター・セイビーにとっては大きなイメージダウンになったが、それでも、「本物」であるだけに、患者の好意的な口コミは止めようがない。
評判が評判を呼び、ついには、リサ・ロペス、スティーブン・セガール、ジョン・トラボルタ、エディー・マーフィー、マイケル・ジャクソンなど、多くの著名人が彼のもとを訪れて助言を求めるまでになった。

「こんな危ない男を、もはや放ってはおけない」一部勢力の危機感はピークに達した。
2016年彼はマネーロンダリングの罪で逮捕され、刑務所で拘留中に死亡した。
多くの人が彼の死に疑問を持った。
「彼の実践する医療が広まることを、不都合に感じる人たちがいる。そういう一部勢力にはめられ、殺されたに違いない」
しかしただの憶測だ。何も証拠はない。

彼の死から三年が経った。彼を慕う声はいまだに絶えない。
「ドクター・セイビーの功績を、広く世界に、そして後世に、知らしめるべきだ」という有志が集まって、彼のドキュメンタリー映画を作ろうという動きが進んでいた。
グラミー賞にノミネートされたこともあるラッパー、ニプシー・ハッスル(Nipsey Hussle)もその一人だ。
彼はドクター・セイビーの健康法の実践者であり、ドクター・セイビーの死は他殺だと確信していた。
彼の曲にこんなライムがある。”They killed Dr.Sebi. He was teaching health.”
ドキュメンタリー映画の作成にも積極的に協力していて、映画でナレーターを担当する予定だった。
一部勢力にとってよほど目障りだったのか、2019年4月銃殺された。
見せしめとしての効果は十分だった。映画化の動きは頓挫した。

しかし、、ほんまに殺してまうんやから怖いなぁ( ゚Д゚)

さて、個人的には、陰謀論に興味はない。
「こういう説もあるよ」ということで紹介したまでだ。
ただ、医療者として、ドクター・セイビーが実践してきた医療には興味がある。
僕の患者にも有効な治療法があるのなら、ぜひ取り入れたい。
「Dr.Sebi’s cell food」で検索すると、彼の意志を継ぐ人が運営するサプリ販売サイトが出てくる。
まず思ったのは、値段がけっこう高い、ということ。普及を願うなら、もうちょっと安くしたほうがいいんじゃないの?^^;
しかし、ものは試しで、サプリをいくつか買ってみた。

実際に自分で飲んでみたんだけど、、、
もともとが健康なせいか、たいして効果は感じなかった。
ただ、ドクター・セイビーが誠実だなと思うのは、サプリに配合しているハーブを、企業機密にせずに、ぜんぶオープンにしているところ。
どのハーブがどういう症状に有効か、著書で解説してて、その本も買ったけど、なかなか勉強になる。
一番賢いのは、自分の症状によさそうなハーブを、Dr.Sebi’s cell foodのサイトから買うのではなく(やたらに高額)、iHerbとかの別のサイトで買うことじゃないかな。