きっとCBDオイルが効くだろう、と思われる患者に、現物の瓶を示しつつ、「これは大麻から抽出したオイルで、」なんて説明すると、
え、大麻?!、と血相を変える人がいる。
違法な薬物を扱っているんじゃないか、とでも言いたいようだ。

なるほど確かに、日本には大麻取締法という法律がある。
しかし1948年に制定されたこの法律が禁止しているのは、あくまで、花穂と葉の利用だけである。
具体的には、こうある。
「第一条 この法律で「大麻」とは、大麻草(Cannnabis sativa L.)及びその製品をいう。
ただし大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く」
条文を読めば、茎やタネはこの法律の守備範囲外、ということがわかるだろう。

実際、大麻由来の製品は、僕らの身近にありふれている。
七味唐辛子の「七つの味」の一つは、麻の実で、これはその名の通り、大麻の種そのものだ。
インコのエサにこだわる人にとって、麻の実はなじみ深いものだろう。
麻の実は漢方では麻子仁という。この言葉を聞いてピンときた人は、便秘で麻子仁丸を飲んだことがある人だ。
麻の茎は線維として非常に有用だ。麻紐(ジュート)としてそこらへんの百均に売っているし、丈夫な麻布は敷物(リネン)、服、バッグなどに加工されている。
さらに、麻は日本の文化にも密接にかかわっていて、たとえば神社の注連縄や神道の儀式にも使われている。

大麻は漢方薬に用いられる生薬の一つでもある。
神農本草経という古い中国の書物があって、365種類の薬物を上品(じょうほん)、中品(ちゅうほん)、下品(げほん)の三つに分類している。
上品は無毒で長期服用が可能な養命薬、中品は毒にもなり得る薬、下品は毒が強く長期服用が不可能な治療薬である。
大麻はこの三つのうち、どこに分類されていると思いますか。
なんと、上品です。毎日摂取してもまったく問題ない、というのが神農本草経の教えるところだ。
それどころか、「諸臓器の慢性病や障害を治し、内臓機能の働きを整える。血液循環をよくし体を温める。過量摂取すると狂ったように走り出す。長期服用によって脳の働きが良くなり、体が軽くなる」と記載されている。

日本で古来から使われてきた大麻草が、なぜ法律で取り締まられているのか。
1948年といえば、まだ日本がGHQの占領下にあった時代である。
日本の国草ともいえる大麻を禁止することで、日本の文化を破壊することを狙ったのだろうか(精神的な意味合い)。
あるいは、すでに戦前から様々な疾患に対する有用性が示されていた大麻を禁止して、代わりに西洋医学の薬を広めることが目的だったのか(製薬利権の確保)。
このあたりの事情については、深い考察をした良著がすでにたくさんあるので、僕はあえて踏み込まないようにしよう。
ただ、僕は現場の一臨床医として、目の前の患者をどう助けられるか、ということだけを考えている。
その治療手段が病態の根治をもたらすものであり(対症療法ではなく)、かつ、法律に違反するものではないのなら、使わない手はないと思う。
要するに僕は、「効くものなら何でも使いたい」。単純に現場主義なんだ。

大麻には大麻特有の成分として100種類以上の化合物が特定されているが、特に重要なのは、THC(テトラヒドロカンナビノール)とCBD(カンナビジオール)だ。
大麻の印象が悪いのは、大麻を吸ってラリってる人がいる、みたいなイメージがあるからだろう。
なるほど確かに、大麻には酩酊成分がある。THCがその本態だ。
一方、様々な薬効はCBDによるものだ。だからこそ、「CBDオイル」なわけだ。
このオイルに含まれているCBDは、茎あるいはタネから抽出したものだ。これなら法律に抵触しない。
THCは花穂、葉に多く含まれている(特に上方の枝ほど、先端部ほど多い)が、この部分の使用は法律で禁止されているため、徹底的に除去されている。
そうでないと、それこそ大麻取締法違反になってしまうわけだから、日本で購入可能などのメーカーのCBDオイルも、この点は厳格に守っている(と思う)。

さて、僕もCBDオイルを現場で使用し始めて以来、患者から様々な反応を得ている。
ある症例を報告しよう(プライバシーに関する詳細は変えてある)。

2歳時に自閉症の診断を受けた22歳男性。
「自傷行為を何とかして欲しい」という母親に連れられて来院した。
幼少時から自分のこぶしで自分の顔や頭を殴ってしまう。それも一回二回じゃない。延々殴り続ける。
母が本人の手を抑えていると、やむ。しかし外すと、再び始まる。
母がつきっきりで手を抑えていないといけないことになるが、これではとても日常生活が成り立たない。
そこで、肘関節が曲がらないよう、両腕は簡易着脱式のギプスで固定されている。
これをつけていれば、腕が曲がらない。だから当然、自分の顔を殴れない。
しかし母としては、我が子にこんなことをするのが申し訳ない。「何かの罪人じゃないんだから。少しでも長く、外してすごせる時間が増えれば」と思っている。
実際外してみて、大丈夫なときもある。食事や入浴などのときは、比較的落ち着いていることが多い。
しかし本人が強いストレスを感じたときや、母の気を引きたいときなど、強く自分の顔を叩く。
母と子は、ほぼ20年間、こういう生活を送ってきた。

母子家庭。親族の協力は得られない。
母としては、いいと言われることは何でもやった。
ABA(応用行動分析)法という、自閉症児などの異常行動を適正化する訓練を行った。
「自閉症の原因はワクチン接種による水銀だ」との説を聞いて、高額なサプリを買ったこともある。
どれもパッとしない。自傷は止まらない。
でも希望は捨てない。情報収集は怠らない。そういうなかで僕のブログを見たことを機に、来院した。

どうしたものだろうか。
僕を頼って来てくれたのはうれしいが、僕もこのような症例は初めてだ。答えはない。手探りでやっていくしかない。
自閉症の原因がワクチン由来の水銀だとすると、栄養療法的アプローチが奏功する可能性はあるはずだ。
食事指導とあわせて、ビタミンCの高用量摂取、亜鉛、セレンなどの有用ミネラルの供給によって、重金属のデトックスを促してみよう。
さらに、有機ゲルマニウムも併用しよう(自閉症児を対象とした研究で大幅に改善した症例があることは、過去のブログで紹介した)。
一か月後。「少しよくなったような気がします。外せる時間が少し、長くなりました」
確かに改善傾向ではある。しかし腕のギプスは相変わらず。
「あせることはない。一か月二か月ではなく、もっと長期的に見ていくことだ。あの研究でも有機ゲルマニウムを1年2年飲んで、改善したのだから」
そう思っていたが、CBDオイルのことを知り、この患者にも勧めた。
当てずっぽうに勧めたのではない。たとえばこの論文を読めば、自閉症患者にはぜひともCBDオイルを勧めたくなる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6287295/

一か月後。来院した母親の顔から、笑顔がこぼれている。
「先生、見てください。この子の腕。ギプスがないです」
これには驚いた。「もうなしでいけるんですか」
「ときどきは出ます。でも、止めればやめてくれるので、もうつけていません」
ビタミンCやマルチミネラル、有機ゲルマニウムを地道に摂り続けた成果がいよいよ出たのか、それともCBDオイルのおかげか。
前者か、後者か、あるいはその両方か。
これは研究ではなく、臨床だから、正確な答えは出ない。
しかし個人的には、CBDオイルが劇的な効果を発揮したのだと感じている。