正月くらいはいいだろう、という甘えが出て、つい酒が増えてしまう。
しかし三が日も今日で終わり。
そろそろ日常に復帰せねば。

アルコール多飲で上昇する血液マーカーの一つに、ALTがある。
似たようなマーカーにASTというのもあるが、ASTは肝臓に限らず心筋、骨格筋、赤血球など広く分布している。
一方、ALTは主に肝臓に分布しているため、とりあえず肝臓の負担を知るには、まずALTを見る。
医学生は「ALTのLはLiverのL」などと引っかけて覚え、試験に備えるわけだけど、学生が臨床検査の授業で習うのは、せいぜい「ALTが35以上だと肝障害の疑いあり」程度のこと。
この検査項目の生理的意味は?低ければ低いほど、肝臓の健全さを示している?
これはASTも同じだけど、「数字が高ければ危険」ということしか学んでいないものだから、一般の医者はこうした問いに何とも答えようがない。

わりと最近の論文に、こんなのがあった。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28633440
タイトルは、「高齢者におけるALT(アラニンアミノ転移酵素)低値と虚弱、障害、筋肉減少、生存率低下について」
要約をざっと訳してみると、、
高齢者におけるALT低値は予後不良であることが示されていたものの、この関連性については詳しく調べられていない。
この問題に切り込むため、我々は前向きデータベース(InCHIANTI study。虚弱、障害、筋肉減少、血中ピリドキシン濃度を系統的に調べた研究)を分析した。
データは、慢性肝臓病、悪性疾患、アルコール依存症のない65歳以上の765人(平均75.3歳、女性は61.8%)から集めた。
「虚弱」はFriedの基準、「筋肉減少」はCTを使った評価(身長と脂肪量から筋肉量を線形回帰し三分位で最も少ないグループ)、「障害」は日常生活の動作で少なくとも一つ介助を必要とすること、とそれぞれ定義した。
ALTと全死亡率、心血管系疾患による死亡率の関連は、時間依存型共変量を伴うCoxモデルで評価した。
結果、ALT活性は虚弱、筋肉減少、障害、ピリドキシン欠乏と逆相関していた。
これらすべての共変量を含めた多変量調節モデルにおいても、ALTが高いほど、全死亡率および心血管系疾患による死亡率は低下していることが確認された。 (全死亡率: ハザード比 0.98 [0.96-1], p = .02; 心血管系死亡率: 0.94 [0.9-0.98], p < .01) ALT活性と死亡率の関連は、非直線的(Jカーブ型)で、血中ALT濃度の下位5分位の人々では全死亡率、心血管系死亡率の急激な上昇が見られた。 これらの結果によると、高齢者におけるALTレベル低値は、虚弱、障害、筋肉減少のマーカーとして、また、有害事象に対する独立した予測因子として、利用できることを示している。 ALT低値と肝代謝能低下の関連性について、今後のさらなる研究が待たれる。 要するに、アルコール依存症とか慢性の肝臓病とか、そういう病気がない限り、ALTは正常範囲内高めのほうがむしろ健康的なんだ。 栄養療法的には、20~22とか言われてる。(この数字の根拠はよくわからんけど。) でもとにかく、ALT一桁とか、決して好ましくない。 一般の先生は「ALT 6かぁ。肝臓はまったく問題ないね」で済ませてしまってるのが現状だろう。 数字は多くの情報を与えてくれるのに、受け手(医者)の側がそのデータの読み方を知らなければ、豚に真珠、宝の持ち腐れということになってしまう。