よかれと思って摂るビタミンが、好ましくない影響を与えることがある。
たとえばビタミンB12、葉酸、ビタミンB6は、摂り方に気をつけよう。
B12をシアノコバラミンで、葉酸をfolic acid(メチルテトラヒドロ葉酸)で、B6をピリドキシンで摂っていませんか?
全然摂っていなくて欠乏症になるよりはマシだろうけど、せっかく摂るのなら、もっとベターな摂り方をしたい。
できれば、B12はメチルコバラミンで、葉酸はfolateで、B6はP5P(ピリドキサール5リン酸)で摂りたい。

これらのビタミンをどういう塩で摂るべきかということについては、ホッファーもソールも特に言及していない。
「水溶性ビタミンの過剰摂取は心配ないから、とにかく摂れ」という感じだ。
でも最近の研究で、下手な摂り方をしては血中ホモシステインが上昇し、むしろ各種疾患(癌、心血管疾患、脳卒中、うつ病、骨粗鬆症など)の罹患率が上昇することが示唆されている。
だから、ホッファーの著書を絶対的な金科玉条にしているようでは、ちょっと危ういんだな。
ホッファーが悪いんじゃないよ。彼は超一流の研究者であり、かつ、臨床家だった。その功績は不滅の輝きを放っている。
でも、学問は進歩する。栄養学も例外ではない。
ホッファーやポーリングら、偉大な先人が打ち立てたオーソモレキュラー療法を、そうした最新の知見に照らしてアップデートしていくことは、後進の責務だろう。
後進が先人の著書を頭に押しいただきあがめたてまつることは、彼ら自身、望んでいないだろう。
「時の試練に耐え得ない部分についてはきっちり批判し、乗り越えて行け。そしてもっと完成された体系を作れ」
泉下の彼らは、きっとそんなふうに思っているはずだ。

ホモシステインの値が高いことは、アルツハイマー病のリスク因子だとわかっている。
そもそも、アルツハイマー病とは何か?
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という動的平衡のなかで生きているのが僕ら人間だが、神経系もこの流れに沿っている。
つまり、記憶の形成に際して重要なシナプスは、絶えず、作っては壊し、作っては壊し、されている。
どうでもいい些細なことまで記憶してしまっては、脳の容量が追い付かない。だから、不要なシナプスはきちんと刈り込んで、デリートすることも必要なんだ。
しかし、このシナプスの「破壊と創造」の均衡が崩れ、破壊優位に進むことがある。これがアルツハイマー病だ。
シナプスがどんどん失われていくわけだけど、その原因は何か?
ざっと、三つある。1.炎症、2.栄養失調、3.毒素だ。

初期の認知症(たとえば長谷川やMMSEでほぼ満点、でも家族の印象としては「相当記憶力が落ちているな」みたいな患者)にビタミンCを出したら、それだけですっかり回復してしまったことがある。
それも一例二例じゃない。かなりの数の患者が見事に回復した。それも単なるシナールで^^;
なぜこんなことが起こったのだろうか。理屈を考えてみれば、極めて筋が通っている。
1.ビタミンCには抗炎症作用があり、かつ、2.ビタミンCは神経系に必須の栄養素であり(脳はビタミンC濃度が最も高い器官のひとつ)、かつ、3.ビタミンCには重金属などの解毒作用がある。
ビタミンCはアルツハイマー病の原因すべてに作用しているわけ。だからこそ、たったの3gのシナールが著効することもあり得るんだな。
こういう人は潜在的にビタミンC欠乏があったに違いない。そして、血中ホモシステイン濃度が高いはずだ。

一般の臨床現場ではホモシステイン濃度を測ることはまずないだろうけど、ホモシステインは炎症と栄養の指標となることがわかっている。
つまり、炎症があると上昇するし、栄養の不足があっても上昇する。
上記のシアノコバラミン、folic acid、ピリドキシンは、どれもれっきとしたビタミンであり、栄養だ。
しかしこれらの過剰服用は、ホモシステインの上昇を引き起こす可能性がある。
どういう機序によってか。メチオニンがホモシステインに変換され、それがまたメチオニンに戻ったり、あるいはシステインなどの他のアミノ酸に変換される代謝系がある。
この変換にはビタミンB12やB6、葉酸、ベタイン(アミノ酸)などが必要なんだけど、この変換に際してビタミンは活性型であることが望ましい。
不活性型では変換能率が悪くて、むしろ炎症の原因になり得る。

認知症に対して、アリセプトを処方されて「これでよし」としているようでは、その人の未来はあまり明るくない気がする。
それよりは、原因に目を向けて、食事や栄養の改善に取り組むことのほうが、本質に近い。
栄養に目を向けたまではいいものの、もっとベターなビタミンがありながら、「いまいちのビタミン」を使っているのなら、もったいないな。