ロンドンに行こうと思って、窓口で「チケット トゥー ロンドン、プリーズ」って言ったら、トゥーの発音が悪かったせいかな、チケットが2枚出てきた。
それなら、と思って、「チケット フォー ロンドン、プリーズ」って言ったら、今度は4枚出てきた。
うわー、困ったな、こういうときどう言えばいいのかなと思って、「えーと、えーと」って言ってたら、チケットが8枚出てきた。

僕としては笑わそうとして言ってるんだけど、「One ticket for London, please.で問題ないはずだけど。どこの窓口であった話?」とか大真面目に返す人がいる。
頭固くて、生きづらいやろうなぁ(‘Д’)

さて、英語の話である。
英語を読むのは得意なほうだけど、話すのはかなり苦手だ。
それでも、一時のことを思うと、多少は話せるようになった。
きっかけは去年の4月に東京で開かれた国際オーソモレキュラー医学会である。
世界中のオーソモレキュラー実践医が東京に集結する。あのソール先生も来る。”Orthomolecular Medicine For Everyone”の著者のソールだ。
この本の日本語版の翻訳者として、彼に話しかけよう、と僕は心に決めた。
そして英会話の勉強を熱心に始めた。

「英語の勉強」と「英会話の勉強」、一見同じようなものに思えるけど、これはもう、全然違う。
前者は、英文法を理解し、英単語を増やし、長文読解のトレーニングをする、みたいな勉強。受験に必要なのは、こっち系の勉強だ。
一応大事な基礎ではあるけど、こういう勉強をコツコツ続けた向こう側に、英語を流暢に話せる未来が待っているかというと、それは絶対にない。
中学生で英語を学び始めて以来、20年以上英語を勉強してきたのにろくに話せない僕が言うんだから、間違いない。

ここに5歳のアメリカ人(マイケル)がいるとする。
マイケルよりも僕の方が、英語での読書など、英語に触れている総時間は長いはずだ。さらに、語彙や英文法の知識も、僕の方が上だ。
マイケルは、たとえばpneumonia(肺炎)とかinduction(帰納)なんて言葉も知らなければ、syntax(統語論)やphonology(音韻額)の知識もないだろう。
しかし、ソール先生と淀みなく自由に話すことができるのは、僕ではなく、マイケルだ。
僕は思っていること、言いたいことの十分の一も言えないだろう。

なぜ、僕はマイケルに敵わないのか。
それは僕が、話すための勉強をまったくしてこなかったせいだ。
5歳児が使うボキャブラリーなんて、たかが知れている。
それでも、その「たかが知れた」ボキャブラリーをフル活用すれば、マイケルは自分の言いたいことを自由に話せるんだ。

アメリカの学者Charles Ogden の発表した”Basic English”という研究によると、英単語は850語も知っていれば日常の用をたすには充分だという。
https://en.wikipedia.org/wiki/Basic_English
そして、簡単な動詞の使い方をマスターすることが非常に重要だとして、”18 vital verbs”(18の必須動詞)をOgden氏は提唱している。
具体的には、以下の動詞である。
be, come, do, get, give, go, have, keep, let, make, may, put, say, see, seem, send, take, will
どれも中学1年で習った単語ばかりだ。
これらの動詞と、前置詞(あるいは副詞)を組み合わせて、様々なフレーズが生まれる。
ここがポイントだ。
まず、簡単な動詞のイメージをしっかりつかむことだ。
そして、前置詞(あるいは副詞)と組み合わせた句動詞を、できるだけたくさん覚えていく。
これが英語を使いこなす秘訣、ということらしい。

たとえば、give。「与える」とだけ覚えていては、浅い。
「与えるから、放す、放つ」と広いイメージで押さえておくと、応用がきく。
give upというフレーズをみたときに、「すっかり放す→お手上げ→あきらめる」と連想で自然と覚えていくのが、英会話の勉強。
「give upと同じ意味の単語としては、abdicateとかabjureというのがあるんだな」と記憶していくのは、英検1級を目指す人の勉強。
後者の勉強は、英字新聞を読むトレーニングとしては適切でも、英会話は一生できるようにならない。

基礎的な意味の動詞を深く理解し、かつ、簡単な動詞+前置詞のフレーズをいかに増やすか。
そしてこの簡単な句動詞がすぐ口をついて出るようにする反復訓練。これが話すための勉強だ。
こういう勉強を数か月続けたおかげで、当日ソールに会ったときには、まずまず思い通りのことを言うことができた。
しかし「ソールと話すこと」を目的にした勉強だっただけに、それが終わると、僕の中で「話すための英語」への情熱は消えてしまった。
僕にとって一番大事なのは、「英語文献を能率よく読むための英語」で、それは今も毎日続けてるんだけど。
やっぱりモチベーションというのは重要だよなぁ。