胃薬にも複数種類があって、そのなかでもPPI(プロトンポンプ阻害薬)というタイプの胃酸抑制薬は、非常によく処方されています。
タケプロン、ネキシウム、パリエット、タケキャブなど、種類もいくつかあります。

2016年2月に認知症とPPIの関係性を示唆する研究が出ました。
保険診療データベースを使ってコホートを集めて、というところで、個人的にはけっこう信頼度上がります。
保険会社というのは当然営利を目的とした組織で、だからこそクライエントの健康情報(どういう持病があって、どういう薬飲んでて、とか)のデータは、かなりしっかりしてます。お金が動いたらどの会社だって必死になるものですよね。

この関係性は実は以前からうすうす指摘されていました。
胃薬飲んでるネズミの脳にはアミロイドβの蓄積が有意に多い、とか。人間相手ではできないような実験をすでにネズミでは行っていて、PPIの長期的な服用はどうもやばいんじゃないか、というのは研究者の間では懸念されていたことであったわけです。
それが今回、人間を使って、統計的に、やっぱり危険だったということが示された格好です。

これは機序を考えても明らかなようにも思われます。
そもそも、人間はなぜ胃酸を分泌するのか。
人間はバカじゃありません。胃潰瘍になったり、逆流性食道炎になるために胃酸を分泌しているのではありません。
体ってよくできたもので、すべて、きちんと、意味があります。
胃酸にも意味があって、食物中のばい菌の殺菌、たんぱく質の分解はもちろん、ミネラルのイオン化促進による吸収のお助けにもなるし、ビタミンの吸収の促進にも働いています。さらに、胆汁などアルカリ性の腸液が、腸内をアルカリに傾きすぎないよう、腸内をいい感じの弱酸性に保つための仕事もしています。

胃潰瘍だ逆流性食道炎だ、それ胃酸抑えろ胃薬だ、というのは発想としては非常に単調で、人体の複雑な精妙さ、など完全に無視しています。

胃潰瘍や逆流性食道炎の根本の原因に目を向けずに、対症療法として胃酸を抑えても、それはモグラたたきのようなもので、仮に胃は守られたとしても、今度は別のところに不調が現れるはずです。
そのモグラが、認知症という形をとりうる、というのが今回の論文のデータです。