・うつ病の大規模スタディーによると、初発から18ヶ月後に調子の良さを自覚している人の割合は、精神療法群で最も高く(30%)、抗うつ薬治療群で最も低かった(19%)。(NIMH 1990)
・統合失調症の予後は、インドやナイジェリアといった貧困国のほうがアメリカなどの富裕国よりもはるかに良好である。貧困国では抗精神病薬を定期的に服用するのは16%に過ぎないのに対し、富裕国では抗精神病薬の服用が標準治療である。(WHO 1992)
・547人のうつ病患者を6年間追跡した研究によると、投薬治療を受けた人はそうでない人に比べて予後不良である確率が7倍以上高く、仕事、家事など「主要な社会的役割」を果たせなくなる可能性が3倍高かった。(NIMH 1995)
・抗精神病薬により脳の形態的変化が引き起こされ、これが統合失調症の症状の悪化と関連している。(ペンシルベニア大学 1998)
・うつ病の診断を受け投薬治療を受けている人は、非投薬群に比べて、一年後のうつ症状および全般的な健康状態のスコアが悪化していた。(WHO 1998)
・長期間のベンゾジアゼピン系薬物の使用者が薬の離脱に成功すると、「機敏になり、かつ、より深くリラックスし、不安も少なくなる」。(ペンシルバニア大学 1999)
・今日の双極性障害の患者の長期的な予後は、投薬治療が導入される時代以前と比べると、格段に悪化している、というのが疫学研究の示すところである。この悪化は、抗うつ薬や抗精神病薬の有害な作用の影響と思われる。(イーライ・リリー; ハーバード医学校 2000)
・短期間のうつ症状を生じているカナダ人1281人を対象とした研究によると、抗うつ薬を服用した人ではそのうちの19%が長期的なうつ状態に移行したのに対し、投薬治療を受けなかった群で長期的なうつ状態に移行したのは9%だった。(カナダの疫学研究 2001)
・薬による治療が導入される以前には、長期的な経過のなかで双極性障害患者が認知能力の低下をきたすことはなかったが、今日、彼らは統合失調症患者と同程度の認知能力低下が見られる。(バルティモアのシェパード・プラット・ヘルスシステム 2001)
・長期のベンゾジアゼピン系薬物の服用者では、「中程度から高度」の認知能力低下が見られる。(オーストラリア 2004)
・エンジェルダスト、アンフェタミンなど、精神症状を惹起する薬物はすべて、脳内でのD2受容体の発現を増加させる。抗精神病薬も脳内で同様の変化を引き起こす。(トロント大学 2005)
・9508人のうつ病患者を5年間追跡した研究によると、うつ症状の見られた期間は、抗うつ薬服用者では年に平均19週であったのに対し、未投薬群では年に平均11週だった。(カルガリー大学 2005)
・統合失調症患者を15年間追跡した研究によると、抗精神病薬をやめた群の40%が寛解した一方、投薬群で寛解に至ったのは5%だった。(イリノイ大学 2007)
・ベンゾジアゼピン系薬物の服用者の長期的な予後は、「顕著に不良」から「極度に不良」であり、常にうつ症状や不安症状が見られた。(フランス 2007)
・ADHDの診断を受けた子供たちを追跡した大規模研究によると、診断から3年目までに「投薬治療を受けているかどうかは、良好な予後の指標ではなく、悪化の指標であった」。投薬を受けた群では、非行に走る傾向も高く、また、背や体格も小柄になる傾向が見られた。(NIMH 2007)
・双極性障害の追跡研究によると、予後不良の主要な予測因子は、抗うつ薬を服用しているかどうかだった。抗うつ薬服用者では、そうでない人と比べて、「ラピッドサイクラー」型双極性障害になる可能性が4倍近く高かった。「ラピッドサイクラー」型双極性障害の長期的な予後は不良である。(NIMH 2008)

上記の記述は、『Anatomy of an epidemic』(Robert Whitaker著)からの引用(p307-309)で、僕がテキトーに訳したものです^^;
この本は文句なしの傑作だと思う。
現代の精神科医療は、とても「医療」なんて呼べるシロモノじゃない、単なる製薬会社の金儲けの手段に成り下がっているんだということが、とてもよくわかる。
著者の筆致は淡々としていて、「製薬会社の不正を糾弾する!」とか「患者よ、今すぐ薬を捨てよ!」みたいに扇情的なわけではない。
筆者の目線は常に中立的で、読者に事実を提供する。「精神科の薬にはこういうメリットがあります。でも、こういうデメリットもあります。さて、皆さんはどうしますか」といった感じで、ことの是非は読者に委ねる、というのがこの著者の基本スタンスのようだ。
現代の精神科医療がどのようにして成立してきたのか、抗精神病薬や抗うつ薬の開発の歴史や、製薬会社が大学や精神科学会などで影響力のある人物にどのように取り入ってきたか、そういったことが淡々と語られる。

精神科医は、内科医や外科医など他の医者から常に一段下に見られていた。
『精神医学?あんなものは科学じゃない。フロイトの精神分析療法とか正気の沙汰じゃない。まじないの世界だよ』と。
ところが抗精神病薬の登場により、事情は一変した。不治と思われていた統合失調症患者が、次々と改善し始めたのだ。精神科医の復権だ。内科の診療風景が抗生物質の登場で一変したように、精神医学もついに『魔法の弾丸』を手に入れたのだ。
当時の精神科医がどれほどうれしかったことか。読みながら、僕にも伝わってきた。
もっとも、抗精神病薬の長期予後がよくないことはすぐに明らかになって、バラ色の未来を約束するような薬じゃないことは露呈したんだけどね。

この本、英語だとアマゾンで1700円くらいで買えるけど、邦訳版は4000円もしちゃう。(https://www.amazon.co.jp/心の病の「流行」と精神科治療薬の真実-ロバート・ウィタカー/dp/4571500092/ref=cm_cr_arp_d_product_top?ie=UTF8)
精神科医を目指す人には必読の一冊だと思う。
というかこの本を読了してなお、精神科医になりたいって言える人がいたら、尊敬するわ、逆に。
薬での治療をすでに始めてしまった人は、薬を急に抜くのは危険だよ。ベンゾは特にね。でも栄養療法なら、減薬、断薬のお手伝いができますよ。