大学受験で医学部を受験することが特殊なのは、それが職業選択にそのまま直結している、ということだ。医学部医学科に合格するということは、ほぼそのまま、医者になるということを意味する(合格したものの、途中でドロップアウトしてしまう人や、医者以外の職業につく人も少数ながら存在するが)。
こんな学部は他にない。
法学部だから弁護士を目指すとか、理学部だから研究者を目指す、みたいに、学部によって将来の職種がやんわりと決まる学部もないわけではないが、それは本当に「やんわり」であって、法学部卒業でも弁護士じゃない人、理学部出身でも研究職じゃない人というのはたくさんいる。
将来の職業は、就職活動を通じて決める。これが普通の大学生の姿だ。
就活中の学生の話を聞いていると、ずいぶんしんどそうだ。
医学部はテストばかりで、大量の知識を頭に詰め込まないといけない大変さはある。でも、就職活動で自分を企業に売り込まないといけない、みたいな大変さはない。
何社も落ち続けてる学生が、こぼしている。
「就活してみて気付いたのは、意外に体育会系の運動部が優遇されていること。『営業は体力が資本だから、部活で体を鍛えたタフな学生が欲しい』と新卒採用の担当者が言っていた。
運動部は一般に上下関係が厳しいから、そういうなかで揉まれてきた学生のほうがコミュニケーション能力も高い、と思われているところもある。オタクっぽい文化系サークルに入っていても、採用担当者にはまったくアピールにならない。いまさらだけど、運動部に入っているべきだった」
こういう声を聞けば、文化系サークルに対する差別だなぁ、なんて以前は思っていたものだけど、今はそうは思わない。採用担当者が運動部出身の学生を優遇するのは、一理あると思っている。
これは確率の問題で、運動習慣のある人とない人で比較すれば、単純に、前者のほうが後者よりも優秀である可能性が高いんだ。
もっと言えば、前者のほうが後者よりも、活動的でポジティブなアイデアマンである可能性が高いし、風邪などの身体疾患の罹患率が低いし、うつ病含め精神疾患になりにくい(企業にとって社員がうつ病に罹患することは大きな損失)。
こういう統計があるから、企業としては少しでも有能な可能性の高い運動部出身者を採ろうとする。
企業はボランティア団体じゃなくて営利活動を目標とする集団だから、これは仕方ないと思う。

さらに言うと、運動する人は記憶力が高いというデータさえある。
これは、高校生の頃の同級生を思い出せば、みんな同意するんじゃないかな。
つまり、何も部活していない子のほうが勉強時間がある分、運動部の子よりも成績がいいかと思いきや、実際には運動部の子のほうがはるかに成績がいい、という例は、みんな見ているだろう。

https://core.ac.uk/download/pdf/85221708.pdf
『高齢ボランティアにおけるレジスタンス・トレーニングの健康および記憶力に対する効果』
目的:健常高齢者において、レジスタンス・トレーニングによる筋力、心理的幸福感、自己制御感、認識スピード、記憶力に対する短期的・長期的な効果を決定すること。
方法:46人の高齢者(平均73.2歳。女性18人、男性28人)をトレーニング群と対照群(各々23人ずつ)に無作為に振り分けた。トレーニング介入は8週にわたって行われたが、介入の1週間前に事前テストを、介入の1週間後に事後テストを行った。トレーニングは週に1回行い、10分間のウォームアップと、マシンを使った8種類のレジスタンス運動で構成されていた。
結果:トレーニング群において、最大筋力の有意な増加が見られた。このトレーニング効果は、自意識過剰の有意な減少と関連していた。これによって、心理的な幸福感が高まったものと考えられる。自己制御感については、有意な変化は見られなかった。
トレーニングの経過とともに、認識機能に対して適度な効果が見られた。認識のスピードについては変化しなかったが、トレーニング群では自由想起や認識力において、事前テストと事後テストの間で有意な変化があった。トレーニング群と対照群で事後テストを比較すると、認識力に軽度の効果があったが、自由想起については有意差はなかった。長期的な効果については、トレーニング群での筋力および記憶力(自由想起)が、1年後も有意に高かった。
結論:8週間のレジスタンス・トレーニング・プログラムによって、不安および自意識過剰が軽減し、筋力が向上した。

この研究がおもしろいのは、被験者が高齢者だということだ。
高齢者でさえ、筋トレによって脳の力が高まったんだよ。若い人が運動をして、プラスの効果が出ないはずがない。しかも、たった週1回だけで効果が出ている。
これはもう、今日からでも筋トレを始めるしかないでしょう!