体内環境の悪化によって病原性を持ったCWDs(マイコプラズマ)は、警察官の警戒をすり抜けてあちこちで悪事を繰り返す犯人のようだ。
警察官(免疫系)は細胞壁に発現しているタンパク質を目印にして外敵を認識するものだから、細胞壁を持たないCWDsに対して、免疫系は成す術がない。
CWDsは、BBB(血液脳関門)さえ易々と通過し、脳神経系にもダメージを与える。
『脳神経障害、脊髄神経根障害、筋炎とマイコプラズマ』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/116630

近年分析技術の進歩によって、ある種のマイコプラズマは人間の細胞内に自由に侵入できることが分かってきた。その例として、ヘリコバクター・ピロリ(いわゆるピロリ菌)が挙げられる。
マイコプラズマと癌を始めとする様々な慢性疾患との関係性は、ピロリ菌と胃潰瘍の関係性と相似形をなしている。
マイコプラズマを抗生剤により死滅させることが困難であるように、ピロリ菌の除菌も困難(厳密には不可能)である。これは、ピロリ菌(グラム陰性細菌というれっきとした細菌)も細胞壁を脱ぎ捨てて、CWD(細胞壁欠如)の形態をとるためである。

ピロリ菌について、世間に誤った”常識”が跋扈している。
検査で「ピロリ菌陽性(+)」になり、「胃癌になってしまうかもしれない!」などと不安になる人がいる。
何をいまさら言っている。ヘリコバクター・ピロリは常在菌であり、健康な人にも普通に見られるものである。”ピロリ菌感染”などという呼称は、ピロリ菌がまるで病原微生物であるような印象を与え、ミスリーディング極まりない。
ピロリ菌と胃癌の関係性を指摘してノーベル賞を受賞したマーシャルとウォーレンも、ピロリ菌が常在菌であることは当然知っていた。ただ、彼らが言いたかったのは、ピロリ菌の過剰繁殖による弊害である。
通常なら何ら問題のないピロリ菌が、過剰に増えることで、胃炎、胃潰瘍、胃癌のリスク因子となる。彼らが言っていたのはこれだけである。「胃腸からピロリ菌を一匹残らず殲滅しろ」などと彼らは一言も言っていない。

本来、ピロリ菌の検出と除菌は極めて困難である。これは、ピロリ菌が環境の変化に対して、すばやく形態を変化させて、球形の真菌様毒素産生CWDに変化するためである。
ピロリ菌の除菌を狙って抗生剤を投与したところで(3種類の抗生剤を使って徹底的にやる)、除去率は75~90%である。せいぜい、減少しただけのこと。全滅させることなどできない。

体内環境の悪化によって変化したCWD型(細胞壁のない)ピロリ菌は、スタチンやその他のカビ毒のような毒素を産生するようになる。これが胃や十二指腸の細胞にアポトーシスを起こす。
このアポトーシスによって、組織の炎症が起こり、炎症後に瘢痕(scar)が形成され、これが潰瘍と呼ばれることになる。

CWD型毒素産生細菌は様々な慢性疾患において見出されているが、多発性硬化症(multiple sclerosis)もそうである(sclerosisというのはギリシア語でscar(傷)のこと。多発性硬化症患者の神経を顕微鏡で見ると、無数の傷が観察されることからこの名前がついた)。
多発性硬化症患者の脳脊髄液のなかには、無数のCWD型毒素産生細菌がいて、患者の神経系はこの毒素(グリオトキシン)によってダメージを受けるのである。

類似が見えるだろうか。
結局、CWD型毒素産生細菌である。
これが胃内で暴れれば、胃壁の細胞にアポトーシスを起こして潰瘍を形成し、脳神経系で暴れれば神経膠細胞(グリオサイト)にアポトーシスを起こす。
膠細胞にアポトーシスが起これば神経を保護的に包むミエリン(髄鞘)が消失し、結果、神経伝達速度が低下して、様々な症状が出現する。

これは仮説ではない。すでに実験的に確かめられた事実である。以下の論文を見よ。
『膠細胞毒性因子と多発性硬化症』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9562313
要約中にこのような一文がある。
「多発性硬化症患者から採取した脳脊髄液を加熱処理し、それを星状細胞(astrocyte)、乏突起細胞(oligodendrocyte)に3日間暴露すると、アポトーシスを起こした」
この意味がお分かりか。
「加熱によってカビ自体は死んでも、カビ毒は無毒化しない」というのは医学的知識というより、家庭の主婦でも知っているだろう。これと同じことである。
多発性硬化症患者から採取した脳脊髄液中のCWDsは加熱によって死滅したが、その毒素は不活化せず、神経系に毒性を発揮した、ということである。

以前のブログで、スタチン(カビ毒そのもの)が多発性硬化症や横紋筋融解症に関与していることを述べた。
これも結局は、作用部位の違いに過ぎない。スタチンが筋細胞にアポトーシスを起こせば、筋細胞に潰瘍ができる。それを、ことごとしく、横紋筋融解症という名前で呼んでいるだけのことである。要するに、”筋潰瘍”である。

病原性CWDsの毒性機序についてもう少し言葉をたすと、この毒素は細胞内に侵入し、さらに核内に侵入して、DNAの二重らせん構造を破壊する。
自然界においてCWDsが果たす役割は、「破壊と再生」である。生存に適さない有機物をいかにして破壊すべきか、CWDsは進化の過程で試行錯誤を繰り返してきた。そうした模索のなかで、細胞の核こそが生命の核心であり、そこに働きかけることが最も能率よく破壊できることに、CWDsは気付き、そういう方向に進化したのである。
そう、この”核心”の壊し方さえマスターすれば、あとはどの細胞でも同じことである。核を損傷させれば、細胞は勝手にアポトーシスを起こす。ジェンガの一番下を崩してやれば、塔はあっけなく崩壊するものである。
神経細胞のアポトーシスは多発性硬化症を引き起こし、胃粘膜のアポトーシスは胃潰瘍を引き起こし、筋細胞のアポトーシスは横紋筋融解症を引き起こす。すべては、場所の違いに過ぎない。
しかし一般の医者はこのことを知らない。根本を知らないから、これらを別個の症状として、個別に対応しようとする。こんな治療では、患者は永遠に救われないだろう。

正しい診断名は、真菌中毒症(mycotoxicosis)である(もちろんこの「真菌」のなかには、内部(CWDs)由来の真菌やスタチンや抗生剤由来の真菌毒も含む)。
根本を把握すれば、対処法はおのずと見えてくる。抗真菌薬よりは、カビ毒の毒性を無毒化するアプローチを試みるべきである。
これについてはまた稿を改めて書こう。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)