ネットにこんな記事が上がっていた。そこで今日は、相撲について思うところを書こう。
『”平成の最強横綱”は白鵬なのか? 曙、貴乃花、朝青龍…名力士と比較した』
https://www.j-cast.com/2019/12/15374993.html?p=all

平成と一口に言っても30年以上あるわけだから、全盛期が平成初期の力士と平成末期の力士、どちらが強いか単純に比較することはできない。でも「時代の違う力士が直接対決したら」というのは相撲ファンには格好の妄想ネタだね^^;
子供の頃、相撲中継を見ていて、小錦がものすごく強かった記憶がある。圧倒的な体重で寄り切られると、筋肉のカタマリのような千代の富士さえも力を発揮できず、飲み込まれてしまう。
横綱に昇進してもいいかどうかは、横綱審議委員会(横審)が決める。昇進の基準は、大関で2場所連続優勝する力量と品格。
前者の基準は明瞭で、小錦は当然基準を満たしていたが、後者はどうとでも言える。
相撲はやはり日本の国技だから、外国人を横綱に据えることに対して横審は相当な抵抗感があったに違いない。「体重で押し出すだけの、技術も何もない相撲」「勝ち方に品がない。何というか、あの体格はほとんど”反則”だろう」なんだかんだと理屈をつけられて、小錦の横綱昇進はならなかった。
それでも小錦が結果を出し続ければ、横審も認めざるを得なかっただろうけど、膝を壊して以降、さっぱり勝てなくなった。故障がなければ横綱になれたんじゃないかな。
個人的には平成最強の力士は、膝を壊す前の小錦だと思っている。動ける200kgというのは、絶対に無敵でしょ。品格のある勝ち方かどうか、と言われると答えに窮するけどね。

この取り組みには小錦らしさがよく出ている。
自分のような巨漢と舞の海のような小兵の取り組みが、お客さんを沸かせることを理解していた。勝負一徹の力士なら、この取り組みのように、手を組み合ったりしない。勢いで潰して終わりだろう。でもそんな勝ち方をしても客は喜ばない。舞の海のリズムにあえて乗っていって、両手を組み合ったのは、サービス精神以外の何物でもない。後にタレントとして成功したのがよくわかる。

小錦は横綱になれなかったが、後に続く曙、武蔵丸らの外国人力士のために先鞭をつけた、ということは言えると思う。
外国人の曙が横綱の昇進条件を満たしたとき、横審は困惑した。曙は勝ち方も文句なくスマートだったから、小錦のときのように難癖をつけることができなかった。
大相撲では、同じ部屋に所属する力士同士は対戦しないことになっている(ただし、優勝決定戦だけは例外)。曙が大関の頃は二子山部屋の全盛期だった。若貴コンビだけでなく、貴ノ浪、安芸乃島、貴闘力など、実力派がそろっていた。一方、曙の所属する東関部屋には上位力士は一人もいない。つまり、同部屋対決回避のルールにより、二子山部屋所属の力士は圧倒的に有利だった。そういう逆風のなかで、曙は見事に結果を見せるものだから、横審もついに認めざるを得なかった。

曙以降、9人の横綱のうち6人が外国出身という状況となっている。国技で日本人がトップを張れないとはいかがなものか、と嘆く声も聞こえるが、必ずしも悪いことじゃないと思う。
僕の親戚が大阪で小さな鉄工所をやっていて、そこでモンゴル人の社員が働いているんだけど、彼の話を聞いていると、モンゴル人力士の活躍が彼の誇りになっている。日本の大相撲が外国からも注目されて、民族的なアイデンティティをさえ鼓舞してるというのは、すごいことだな。相撲がきっかけで日本語を勉強するようになって日本に留学、就職したのは、彼ばかりではないだろう。相撲おかげで多くのモンゴル人が日本のことを好きになってくれているんだ。こんなにすばらしいことってない。

モンゴル人初の横綱朝青龍は、確かに強かった。土俵外での問題行動のせいで追放されたけど、ああいうぶっ飛んだキャラがいたほうが相撲は絶対盛り上がる。
ヒール(悪役)の朝青龍とベビーフェイス(善役)の白鵬というツートップ時代がもっと続けばおもしろかったのにね。朝青龍を追い出したのは日本相撲協会の愚策だよ。絶対においておくべきだった。
だってこの取り組みを見てごらんよ。

見るたびに震える。何度でも見たい。相撲のおもしろさを凝縮したような一番だと思う。
2002年秋場所。横綱貴乃花はすでに満身創痍で、いよいよ引退するのではないかとささやかれていた(事実、この4か月後、2003年1月に引退を発表する)。
貴乃花の疲弊した表情。かろうじて横綱としてのプライドが、彼を支えている。
対するは大関朝青龍。破竹の勢いで昇進し、横綱になるのも間もなくのことと目されていた。昇進のペースに不服はないものの、朝青龍は気に入らない。去年貴乃花に完敗しているのだ。何としても一発返さねば気が済まぬ。
老いた老兵と登り竜の若手の対決。朝青龍の忙しい動きに対して、貴乃花の動きはどこか緩慢に見える。しかしやがて四つに組み合い、貴乃花の下手投げが決まった。
花道を引き揚げる朝青龍の「ちくしょう!」の叫び声。
いい。非常にいい。日本人力士なら、こんな叫び声は出さない。内なる感情を押し殺すのは、それはそれで日本らしい美徳だと思うけど、本当に悔しいときは出せばいいのにね。その点、朝青龍は素直で、悔しさが言葉になってほとばしり出た。100%ガチを示す、こんな雄弁な証拠ってない。
現役時代ガチンコを貫いてきた貴乃花には、引退後、相撲界にうっすらはびこる八百長の空気が許せなかったんだろうな。