天疱瘡という病気がある。
皮膚や粘膜にびらんを生じる病気で、自分の細胞の接着分子に対して抗体を作る自己免疫疾患だと言われている。
具体的には、こんな皮膚症状が生じる。

難病指定されてて日本全国で患者は6000人ほどと言われているけど、おそらく現場の皮膚科医としてはそんなにレアな疾患だというイメージはないと思う。
個人的にはポリクリで皮膚科を回ったときに見たことがあるのはもちろん、皮膚科が専門ではない僕でもときどき臨床で見るくらいだから、実数はもっと多いのではないか。

自己免疫疾患だから、治療はステロイドが基本。
症状の重症度と体重に応じたステロイドを投与するが、それで改善しなければ、ステロイドパルス療法として大量に投与する。
しかしステロイドは副作用の多い薬だ。
天疱瘡の症状は改善したものの、ステロイドの副作用で胃潰瘍になったりうつ病になるかもしれない。
感染症にかかりやすくなるし、長期に服用すれば骨粗鬆症にもなるだろう。
気になる症状がおさまったものの別の症状が現れては、一体治療なのか何なのか、よくわからない。
だから、副作用を抑えるための薬を投与しよう。
胃潰瘍の予防にPPI。骨粗鬆症の予防にビスフォスフォネート。
しかし、胃酸分泌を無理に抑えるとどうなるか。タンパク質の消化能力やミネラルイオンの吸収が低下する。腸内のpHが上がって悪玉菌優位の腸内細菌叢になる。
ビスフォスフォネートによって、むしろ骨折が増える。顎骨壊死が起こるかもしれない。
副作用を抑える薬がさらに別の副作用を起こして、もはや何がそもそもの病気で何が副作用なのか、わけがわからなくなる。西洋医学の対症療法によくある話だ。

天疱瘡に対してはステロイドを投与する、というのは、ガイドラインにしっかり書かれている。
しかしガイドラインには記載がないものの、天疱瘡にてきめんに効く治療法がある。ビタミンDの投与だ。
最近新たに開発された治療法、というわけではない。それどころか、すでに1930年代に著効することが知られていた。

医学というのは日進月歩で、年々進化していると皆さん思っているでしょう?
ある意味ではそうで、天疱瘡患者の血中に見られる抗デスモグレイン抗体がどうのこうの、みたいな科学的知見はどんどん増えている。
しかし、「誤った前提から出発する命題は、全て偽である」というのが論理学の教えるところだ。
現代西洋医学は、栄養の重要性を無視している。製薬会社の利益にならないビタミンなど、存在自体が完全に黙殺されている。
「抗デスモグレイン抗体がどうのこうの」的知識がいくら増えたところで、治療法はハナからステロイドありき、なんだ。
患者の利益にならない知見がどれだけ集積したところで、何の役にも立たない。

『天疱瘡はビタミンDによってコントロールできる』(1939年3月)
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/519153
要約
1932年Ludyは高用量のビオステロール(ビタミンD)と紫外線療法によって明らかに症状が改善した天疱瘡の症例を6例報告した。
彼の結果を参考にしてビオステロールの高用量治療を行った症例につき、報告する。

Ludyの報告は医療現場を大いに刺激したようで、その後あちこちで追試が行われ、ビタミンDの有効性が裏付けられた。
たとえば以下のような報告。
『皮膚科におけるビタミンD療法』(1941年1月)
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/519698
『高用量ビオステロールによる天疱瘡の治療』(1939年7月)
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/519242

1940年代の医者にとって「天疱瘡にはビタミンD」というのはもはや常識だった。
今の医者はそんなことをまったく知らない。患者の側から「天疱瘡にビタミンDが効くって聞いたんですけど」なんて言おうものなら、怪訝な顔をされるだろう。
時代が進むにつれて、医療が進歩するだって?とんでもない!
知識は、退歩する。医者のレベルは、低下する。
「昔はよかった」なんて懐古的になってるわけじゃないけど、こと医療に関しては、ビタミンに目を向けていた1930年代40年代のほうがはるかに患者にやさしい医療だった、ということは言えると思う。