何を隠そう、僕はかつて、ユーチューバーだった。
そもそもユーチューバーの定義って知らないんだけど、「自分で動画を撮って、ユーチューブにアップする人のこと」ぐらいの認識でいいよね?「ユーチューブで生計を立てている」までいかなくてもいいよね?
そう、だとすれば、僕は確かにユーチューバーだった^^

開業当初、クリニックの宣伝を兼ねて、栄養に関する情報発信をしようと思い立った。
ビタミンCやらナイアシンやらについて、10分くらいの短い動画を作って、毎日のようにアップしていた。
編集はほとんどしない。気のきいたBGMも字幕もないし、サムネイルもない(そもそも、編集のスキルがない^^;)
自分が録音ボタンをタップした瞬間がスタートで、録音ボタンを切ったところが動画の終了。言葉につまったり言いよどんだりかんだり、っていうのも編集せず、そのまま流していた。
今思えば、メンタリストDaigoがやってるスタイルそのままで、あれはあれで全然ありだったのかな。
チャンネル登録者も順調に増えていたし、あのまま続けていればよかったような気もする。

しかしあるとき、アップしている動画をすべて消してしまった。ほとんど衝動的に。
なぜだろう?
いろいろ思うところがあって、簡単に言葉にしにくいんだけど、一番大きいのは、恥、という感覚じゃないかな。
撮りっぱなしでろくに編集していない、というところが恥ずかしいんじゃない。
内容勝負だと思っているから、言葉につまるとか、白衣の下に着てるTシャツがダサいとか、そういうのは全然気にしていない^^

僕が恥ずかしいと思ったのは、動画がずっと残っていく、というところ。
自分でいうのも何だけど、僕はずっと勉強している。全然自慢してるんじゃないよ。ギター少年が一日中ずっとギター弾いてるでしょ。彼は楽しんでやっているのであって、別に、努力している、なんて意識、彼にはないよね。それと同じで、僕もずっと論文読んだり、なんやかんや勉強している。
で、勉強すれば、新たな治療論や方法論を知って、知識が増えていって、僕自身が変わっていくんだよね。

動画は手を抜いて作ったわけじゃない。ちゃんと下調べして、どうやって伝えようかと事前に考えを巡らして、自分なりのベストを尽くして作っていた。
でもあくまで、その時点でのベスト、なんだな。
成長を続けていれば、過去は常に未熟で、その未熟な自分が得々と語っている姿というのは、もうたまらない。”未熟”が服を着てしゃべっている、という感じだ。
他の誰がどれだけイイねをくれようが、僕自身は恥ずかしくて動画を見れない^^;

十代の頃に書いた日記を読み返したときの感じに似ている。若書きの勢い、とぃうのは確かにあって、それはそれで、おもしろい。そのときにしか放てない輝き、というのは確かにあるだろう。
しかしそれは、私的な日記だから許せるんだ。誰もが自由に、半永久的に(YouTube がいつまで存在するのか知らんけど)閲覧できる半ば公的な場に、未熟な自分を置き続けることが、僕は耐えられなくなってしまった。

最近は、猫も杓子もユーチューブ、で、ブログはもうオワコン、みたいに言われてる。
本当にそうかな?
誰もがユーチューブに参入すれば、それだけ競争が激化して、勝てるのも結局一握り、っていう状況は今後も変わらないと思う。
栄養療法、というのはニッチな分野だけど、一定数の需要はあるだろうから、本気で頑張って固定ファンをしっかり掴めば、毎月生きていくくらいのお金は稼げるかもしれない、という思いはある。
でも、さっき言ったような理由で、僕には不向きなようだし^^;、それに、ブログがもうオワコン、とも思えないんよね。
ブログを始めた当初は、「こんなもん、誰も読んでへんやろう」という気持ちがあった。でももちろん、「わかる人には、わかるだろう」という希望も。
たとえば、みんなの前で講義をする先生は、生徒の理解力を信用する、という大前提がある思う。「どうせお前ら、わからへんやろう」という思いでは、いい講義はできないし、そもそもそんな気持ちでは先生自身の身が持たないだろう。

ブログを続けてみてわかったことは、世の中にはちゃんとした読解力のある人がいる、ということ。そういう人には、活字表現でも充分、伝わっている。
むしろ、情報伝達のスピードと能率では、一般に伝聞よりも文字のほうが早いものだから、活字に強い人にとっては、ユーチューブで学ぶことは冗長でもどかしいんじゃないかな。
本は、欲しい情報のところだけを拾い読みができるけど、動画は見るとなれば一本丸々、ということが多くて、そこも不便だな。
僕はユーチューブを見るときは、2倍速にして見るのが基本になっている。普通のスピードでは、まどろっこしくて見ていられない。
ただし、音楽とお笑いだけは例外。音楽を2倍速で聞くと、音楽の意味がまったく変わってしまうし、お笑いの2倍速も、緊張と緩和がズレて、笑えなくなってしまう^^;

最近、自分がかつてユーチューバーとして活動していた痕跡を、思いもかけないところで見つけた。
『アルツハイマー病〜真実と終焉』のレビューを読んでいるときに、たまたま僕のことに言及されている記事を見つけた。

長文のレビューなので、抜粋すると、
「あと、最近知ったのですが、この本(日本語版)のレビューを解りやすくされている医療関係者の動画(19分)がYoutubeにアップされています。日本語に関しては、先述の「世界一受けたい授業」や本書のイントロ(序章)よりも、このレビュー動画の方がずっと解りやすかったです。本書を読まれる前に、この動画を観る事を是非お勧めします。URLは以下の通りです。
https://www.youtube.com/watch?v=VbwgfsFMQXM
レビュー動画を作って頂いた方(中村先生というお名前ですか?)、どうも有難うございました。先に動画を観るよう、知り合いにも勧めます」

URLを検索しても、もう動画は見れません^^
かつての自分の情報発信が誰かの心に届いていた、ということを、時間差で知って、何だか胸があたたかくなるような気持ちになった。
このレビューを書いたのが誰か知らないけど、僕のほうが「ありがとう」って言いたいよ。