ミノサイクリンが統合失調症に効く、などと聞くと、ホンマかいなと思うんだけど、確かにそういうエビデンスはあるんだな。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18991666)
抗精神病薬単体投与群に比べて、ミノサイクリンも併用した方が良好なアウトカムが得られたという。
これは突拍子もないことではないと思う。
たとえば抗うつ薬は、抗結核薬の新薬を治験しているときに患者が陽気に踊り出したことから研究開発が進んだ経緯があるように、抗菌薬が何らかの機序で精神疾患に影響を与える可能性は大いにありそうな話である。
すぐ思い浮かぶ機序としては、たとえば腸内細菌叢にアンバランスがあっていわゆる悪玉菌が炎症性物質を作っていることが精神疾患の増悪因子だとすると、抗菌薬によってそこが改善されるのかもしれない。

この仕事は2007年に日本の研究者によって報告されて、その後世界各国で追試され、結果が裏付けられた。
2012年には、同じ研究者が「SSRIにミノサイクリンを併用することでうつ病の治療効果が高まる」ことを報告した。単体投与群よりも併用群のほうで、有意に改善した。
提唱されている機序としては、ミノサイクリンの抗炎症作用である。ミクログリア細胞(小膠細胞)の働きを抑えることによって、脳内の炎症が軽減されるのではないかと考えられている。
安保徹先生によると、脳のグリア細胞も肝臓のクッパー細胞も、要するにマクロファージ由来だから、ミノサイクリンが白血球を介した免疫系の暴走を抑えているのかもしれない。

ミノサイクリンに限らず、テトラサイクリン系の抗生剤には抗炎症作用があって、アトピー性皮膚炎にも効くんじゃないかという話もある。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4910375/)

こういう論文はおもしろいけど、実用的にはあんまり意味がないようにも思う。
甘いものドカ食いしてる統合失調症の患者がいるとして、抗精神病薬とミノサイクリンを併用して、見事、幻覚妄想の陽性症状が消失したとして、さて、それで一件落着と言えるのか。
「症状が軽快しましたね。お薬をやめて様子を見ましょう」とは当然ならない。治癒ではなくて寛解だから、この2種類の投薬は続くことになるだろう。そうだとして、長期的なアウトカムはどうなのか。長く抗生剤を飲み続けるリスクは?
食事含め生活習慣の改善が手付かずだとすれば、結局何も変わらないどころか、長期的には余計ひどいことにならないか。

カスケードの上流を抑える治療ほど、ベターだと思うんだ。
つまり、なるほど、病態の発症機転に炎症が関与しているとして、じゃ、抗炎症薬を投与しましょう、というのでは、火事のところに消防車を送り込むような治療であって、ちっとも根本的じゃない。
そもそも火事を起こさないようにすることのほうが大事なのは明らかで、だからこその食事改善であり、栄養療法なんだ。