骨を強くするにはどうすればいいか。
カルシウムを摂る?
そう、かつてはそう言われていた。カルシウムは骨に欠かせないミネラルだから、積極的に摂取して骨を強くしましょう、と。
しかし、カルシウムの摂取量が多い地域(フィンランドやスウェーデン)では骨粗鬆症の発症率が高いという疫学研究が出たことで、『カルシウム善玉説』が崩れ始めた。
学者の間で激しい議論が交わされた。「なるほど、カルシウムの単独摂取では骨にむしろ悪影響が出るかもしれない。しかしビタミンDとの併用で、健康効果が高まるのではないか」
カルシウムの摂取量だけではなく、ビタミンDサプリの使用の有無も含めた疫学研究が行われた。結果は衝撃的だった。
骨粗鬆症予防のためにカルシウムのサプリを摂っている女性では、そうでない女性に比べて、動脈硬化が進行しているリスクが高く、また、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高かった。ビタミンD摂取の有無はこの相関と無関係だった。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21505219
骨のためによかれと思って摂取したカルシウムのせいで、心筋梗塞や脳卒中になってしまっては困る。
なぜこんなことになったのか。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進する。しかし血中のカルシウム濃度が上がったところで、それが肝心の骨に届いてくれなかったら、意味がない。それどころか、カルシウムが動脈や皮膚などの軟組織に沈着しては、無益どころか有害だ。
血中に増加したカルシウムを、いかに骨に届けるか。そのカギこそ、ビタミンK2だ。
カルシウムとビタミンD3だけでは逆効果だったが、そこにビタミンK2が加わることで、骨密度が上昇する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3154347/
D3とK2は車の両輪だ。併せて摂るようにしよう。

他に骨を強くする方法は?
当然、運動も効果的だ。体を動かすことによる機械的刺激が、骨を強くする。
逆の場合を考えてみるといい。
老人が寝たきりになると、骨量の減少が急速に進むことはよく知られている。これは若い人でも同じだ。
宇宙飛行士を対象にした研究がある。宇宙に滞在する1ヶ月あたり平均1〜2%の骨量の減少があり、特に下半身(腰椎、脚)での減少が著しかった。逆に、血中のカルシウム濃度が増加していた。これは腎結石のリスク因子でもある。
https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2001/ast01oct_1

ストロンチウムのサプリメントもいい。
ストロンチウムと聞けば、放射性物質をイメージする人が多いだろう。確かに、ストロンチウム89や90は放射性物質だが、クエン酸ストロンチウム(サプリとして普通に売っている)やラネル酸ストロンチウム(骨粗鬆症治療薬)は放射性物質ではない。
周期表を見ればわかるように、ストロンチウムはマグネシウムやカルシウムと同じ第2族元素だ。
同族元素は性質が似ているもので、ストロンチウムも、マグネシウムやカルシウム同様、骨に取り込まれ、その強度を保つ役割を果たしている。
骨形成(類骨形成)の促進、骨吸収の抑制(破骨細胞の成熟遅延)といった作用が示されている。

何か新しいサプリメントを患者に勧めるとき、僕自身が自分で試してみることにしている。
ビタミンK2とストロンチウムのサプリを飲み始めたのが同じ時期だったせいで、どっちの効果かはわからないんだけど、筋トレの効果が高まった実感があった。
僕はこの一年ほど、ほぼ毎日ジムで筋トレをしている。
2ヶ月ほど前にビタミンK2とストロンチウムのサプリを飲みだして以後、明らかに筋肉のつきかたが向上した。パンプアップしたときの筋肉の張りが大きくなった。
rep数も上がった。以前は10回で限界だったのが、あっさり12回できるようになったりして、自分でも驚いた。
「なぜだろう。なぜこんなに筋力が上がったのか。最近始めたこととしては、ビタミンK2とストロンチウムしか考えられない」
そこで、これらの栄養素に筋力増強作用があるか、論文検索してみた。
ビンゴ!
予想通りだった。ビタミンK2、ストロンチウム、どちらにも筋力増強作用がある。
『ビタミンK2は牛の骨格筋の細胞の増殖および移動を促進する』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5884547/
『卵巣切除ラットの筋肉および椎骨に対するラネル酸ストロンチウムの効果』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29242963
どちらも人を相手にしたものではないけど、非常に示唆的な研究で、人で成り立つ可能性は十分あるだろう。
骨粗鬆症の人がビタミンK2を飲み始めると骨折の発生率が下がることがわかっている。これはビタミンK2による骨密度の強化によるものだと研究者は考えているけど、別の機序として、ビタミンK2によって筋力がついて、結果、転倒リスクが軽減すると同時に骨折も減った、という可能性もあるんじゃないかな。
骨粗鬆症とサルコペニア(筋減少症)はしばしば合併することが知られている。骨の減少と筋肉の減少に相関があるということは、興味深い。理学療法士は、筋トレは「骨トレ」でもあるということを、経験的に感じていると思う。
そもそも、発生を考えれば、骨、筋肉、関節は皆、中胚葉由来。要するに、共通のご先祖様を持つ親戚同士なんだ。骨にいいものは筋肉にもいい、筋肉にいいものは関節にもいい、というのは発生学的に筋の通った類推だと思いませんか?