ビタミンAに対する恐怖心は煽られすぎている。高用量どころか、一日推奨量(男性3000IU、女性2300IU(妊婦4300IU))でさえ、危険だという人がいる。
こんな主張にエビデンスはまったくない。一日推奨量の2倍量を摂取する人を長期間にわたって追跡した研究があるが、有害事象はまったく観察されなかった。
(参考『ビタミンA~ヒトにおける機能、食事必要量および安全性』https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9129249)
さらに、1日25000IUの服用を2~12年間服用した人の研究においても、肝障害およびその他の毒性は見られなかった。
ただし、アルコール依存症者と肝臓病のある人は例外である。レチノールの代謝には肝臓が関与しているからだ。

ビタミンAサプリを長期間にわたって大量投与すると、どんな毒性を生じるのか。
食欲低下、皮膚の乾燥・かゆみ、脱毛、頭痛、骨肥厚、肝障害といった症状が起こる。これらを見て、賢明な人は気付いたかもしれない。
そう、ビタミンA過剰による症状は、ビタミンA欠乏による症状とかなり重複している、ということだ。
ビタミンA、D3、K2は協調して働くと前に言ったが、ビタミンAの過剰によってこれらの脂溶性ビタミンのバランスが崩れ、相対的なD3、K2欠乏を来す。
つまり、ビタミンAの過剰摂取による毒性とされているものの多くは、D3、K2欠乏による症状であり、これは逆のことも言える。
一種類だけ突出して多く摂れば、他の必要量が増大することになるが、この状態を放置すれば、毒性としての症状が出現することになる。

最近、様々な疾患に対するビタミンD3の有効性が示され、D3を積極的に摂取するよう奨励する人が多い。
しかし、ビタミンAのことはすっかり忘れられている。それどころか、ビタミンAの摂取は極力控えるように指導する人さえある。
そうした人の主張は、以下のようだ。
「レチノールはビタミンDに拮抗するため、Dの効果が弱まってしまう。たとえばビタミンDの作用の一つは、骨芽細胞を活性化し骨密度を高めることだが、ビタミンAは骨破壊を促進する」
なるほど、この主張は一見正しそうに見える。しかしAとDの作用は、相殺しているのではない。協調しているのだ。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という動的平衡が生命の本質であるように、ビタミンAによる破骨細胞の活性化とビタミンDによる骨芽細胞の活性化は、破壊と創造そのものだ。
ビタミンAとDの働きは、「拮抗する」というよりは「相補的」と解釈するほうがより本質に近い。

ビタミンK2依存性タンパクが産生されるとき、D3とAはアクセルとブレーキのように働く。運転するときに必要なのはどちらですか。両方だ。
もっと言うなら、D3とAの働きはまったく別物、真逆のものかというと、全然そんなことはない。たとえば、オステオカルシンの産生には、この両ビタミンが協調して働いている。
D3単独でもオステオカルシンは産生されるが、Aが加わることで産生能率が非常に高まる。1たす1が3にも4にもなる相乗作用だ。
一部の人が言うように、AとDが拮抗するだけの関係なら、同時摂取しても相殺されるだけで何のメリットも見られないはずだ。
しかし実際には、AとDが骨形成に協調して働くことで「総和が部分和よりも大き」くなっている。

ビタミンAのせいで骨粗鬆症になる、という主張がある。確かに、介入試験、疫学研究の両面から、これを示すエビデンスがある。
Aが破骨細胞を活性化することを知っていれば、D抜きでAを大量投与すれば骨密度が低下することは簡単に予想のつくことだ。
A抜きでDを大量投与しても、有害事象が起こる。なるほど、これらの研究はいずれも科学的事実の一端を提示するものだが、もう一つ、重要な研究がある。
ビタミンA、Dの両方を大量投与した場合、単独投与で見られたいずれの副作用も一切見られなかったのだ。
(参考『七面鳥の骨格形成におけるビタミンAとDの相互作用』https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4009300)

疫学研究によると、ビタミンAの摂取量が多い地域ほど骨折の発生率が高いことが示されている。
たとえばスカンジナビア諸国の人々はレバーソーセージのようなレチノールを豊富に含む食材を好んで食べ、このためにビタミンA摂取量が多い。
しかしこの研究の欠点は、ビタミンDの血中濃度を考慮していないことだ。Dは骨折のリスクを評価する上で欠かせない評価項目だ。
そして、まさにこのスカンジナビア諸国では冬が長いため、人々の血中ビタミンD濃度は低い。ある学者は、以下のように指摘している。
「ビタミンDの血中濃度が低いと、腸管でのカルシウム吸収が低下し、また、骨芽細胞の活性も低いままである。
そこに加えて、高用量のビタミンAを含む食事が、状況をますます悪化させている可能性がある」

参考
Vitamin K2 and the Calcium Paradox(Kate Bleue著)