ビタミンB群を消耗させる薬は本当に多くて、たとえばアスピリン、エストロゲン製剤(ピルやステロイドも含め)、利尿薬、抗てんかん薬(テグレトール、デパケンなど)、抗炎症薬(イブプロフェンなど)、抗パーキンソン病薬(カルビドパ、レボドパなど)など、無数にある。
ピルは月経痛や月経不順などの症状に使われるのはもちろんだけど、避妊のために使っている人も多い。
つまり、健康な人が飲むことが多い薬なわけで、こういう人は、まさか自分が薬剤性のビタミン欠乏に陥っているなんて思いもしない。
ピルが血中ビタミン濃度にどのように影響するかについて、以下のような論文があったので紹介しよう。

『経口避妊薬の使用~葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12に与える影響』https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21967158
要約
女性が経口避妊薬(OCs)を使用する一方で、無計画な妊娠も多いものであるから、OCsが葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12に与える潜在的影響について理解しておくことは重要である。
OCsが葉酸代謝に悪影響を与えることは先行する多くの研究が示しているところであるが、これらの研究の大半はOCsのエストロゲン含有量がはるかに高い時代に行われたものである。
さらに、潜在的な交絡因子についてコントロール群が設定されていないなど、これらの研究から得られた知見の解釈には問題があった。
最近のデータによると、現在使用されているOCsが葉酸代謝に悪影響を与えるという結論は、支持されていない。
しかしビタミンB6について、現在の低用量OCsがビタミンB6に悪影響を与えていることは、エビデンスを以って示されている。
OCs使用者では血中ピリドキサール5リン酸の濃度が低いことが認められているが、これは体内でビタミンB6の貯蔵量が減少していることを反映している可能性がある。
こういう女性がOCsの服用をやめ妊娠したときには、妊娠中にビタミンB6欠乏を呈する危険性がある。
ビタミンB12の状態については、OCsの使用による有意差がでなかった。しかし確定的結論を下すには、今後のさらなる研究が待たれる。

文献にあるように、「長らくピルを飲んできたけど、この人の子供なら、と思ってピルを飲むのをやめて、そして妊娠した」みたいなパターンはかなりやばい。
本人がビタミンB6の消耗を自覚していないからだ。
ピルの害についてさらにいうと、ピル服用者では血栓症のリスクが増加するというデータがある。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11301170
とあるテレビ局の30代の女性アナウンサーが脳梗塞を発症したというニュースを以前見たことがある。
食生活の乱れた中高年のオヤジが脳梗塞を発症する、というのならわかる。でも若い健康的な女性が脳梗塞になるなんて、普通は考えられない。
答えはひとつ。普通じゃないことをしていたんだよ。つまり、ピルを飲んでいたんだろうね。
薬が原因で病気になったのなら、当然打つべき手は、原因薬剤の中止だ。しかしいろいろな事情でピルをやめられない人もいるかもしれない。
そういう人はせめて、ビタミンB6あるいはB群のサプリを摂ろう。

抗てんかん薬を飲んでいる人では、血中に葉酸、ビタミンB12が少なく、ホモシステインが多い、と言われているが、てんかん薬の種類、成人か小児か、によって影響は異なるようだ。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29341053
抗てんかん薬がまずいのは、ビタミンだけでなく、カルニチンの代謝にも影響を与える点だ。
『抗てんかん薬とカルニチン』という論文。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10904975
要約を訳す。
カルニチンはすべての哺乳類の組織にある非タンパク性窒素化合物である。その主な働きは、β酸化のためにミトコンドリアの膜を経由して長鎖脂肪酸を運び入れることである。
カルニチンの血中濃度は、食事からの吸収、肝臓における生合成、腎臓での再吸収によって調整されている。
カルニチンの濃度に変化があるということは、これらの機序のどこかに異常があるか、遺伝的に代謝に問題があるか、である。
抗てんかん薬の服用患者では血中カルニチン濃度が減少していることが報告されている。
バルプロ酸の単剤による治療なのか、あるいは他の抗てんかん薬と組み合わせての治療なのかということが大きく影響するが、その他の抗てんかん薬のなかでも特にカルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールは、服用患者の約21%でカルニチン欠乏を引き起こしていることが研究で示された。

ミトコンドリアというのは細胞内のエネルギー産生工場で、そこに脂肪酸を運び入れるときに必要なのがカルニチンだ。
だからカルニチンが欠乏すると、元気がなくなる。
最近の相撲界はモンゴル出身力士の勢いがすごくて、日本人力士はさっぱり振るわない。モンゴル人力士の強さの秘訣は羊肉ではないか、という指摘がある。
モンゴル人は牛肉、豚肉、鶏肉よりも、羊肉をはるかによく食べる。
カルニチンを豊富に含む羊肉がミトコンドリアのエネルギー産生能率を高めている可能性は、確かにあると思う。
それに、狭いケージの中に閉じ込められて遺伝子組み換え飼料を食わされ、ホルモン剤やら抗生剤やらわけのわからない注射をいっぱい打たれている牛、豚、鶏よりも、まだしも羊のほうが健康リスクは少ないだろう。
以前に書いたけど、てんかんに対しては薬よりもまず、ビタミンB6を試すべきだ。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4204538/
できれば薬はやめたいところだけど、いろんな事情でやめられない人は、カルニチンのサプリを摂ったり、羊肉を食べたりして、少しでも薬害の軽減に努めよう。