ナイアシンの作用に驚く人は多い。
驚く、というのは、長年悩んでいた不安症状がやわらいだ、とか、不眠が軽減した、とか、関節痛がマシになった、とか、甘いものを食べたい欲求が減ったとか、その治療効果に驚いた、という意味と、あともう一つ。
ホットフラッシュ(紅潮)に驚いた、という人。
ナイアシンを勧める前に、フラッシュがあり得ることについては説明している。
それでも、驚く。
人によっては、「ひどいフラッシュが出た。熱いような、かゆいような感じが気持ち悪いので、飲みたくない」となってしまう。

ほとんどの人は問題なく服用している。「本当に救われた。奇跡のサプリメントだ」と絶賛する人もいる笑
しかし最初に経験したフラッシュがあまりにも不快だったせいで、ナイアシンに拭い難い嫌悪感を持ってしまう人も、確かにいる。
最初の不快感にめげずに服用を続ければ、やがてフラッシュは起こらなく(あるいは起こりにくく)なる。初めてが一番強く出るんだ。
だから、頑張って継続してくれればいいのだけど、もう飲む気になれない。
こういう症例を何人か経験したこともあって、僕はナイアシンの使用には非常に慎重になった。
100人に使って、95人に問題がなかったとしても、5人に問題があったとすれば、気を使わざるを得ない。

長年苦しんだ慢性症状を軽減してくれるサプリにせっかく出会ったのに、嫌悪感を抱いて二度と飲みたくないとなっては、患者にとって不幸だし、僕も悲しい。
だから僕は、まず、フラッシュフリーナイアシンで開始するか、500㎎錠ではなく100㎎錠で開始するか、するようにしている。

『ナイアシンによるフラッシュの機序と緩和法』という論文があるので、ざっとかいつまんで説明する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2779993/
ナイアシンによってフラッシュが起こるメカニズムは、まず、皮膚にあるランゲルハンス細胞において、Gタンパク共役受容体109A(GPR109A)の活性化が起こる。
それによってアラキドン酸とプロスタグランジン(PGD2、PGE2)が増加する。結果、毛細血管でプロスタグランジンD2受容体(DP1)、プロスタグランジンE2受容体(EP2)、プロスタグランジンE4受容体(EP4)の活性化が起こり、皮膚の血管拡張が起こる。
この作用機序を踏まえれば、ホットフラッシュを抑える対策として、以下の方法が考えられる。
1.ナイアシンの吸収速度を遅らせる。
2.プロスタグランジンの産生を抑制する。
3.プロスタグランジンの各受容体(DP1、EP2、EP4)をブロックする。

1.のやり方としては、ナイアシンの徐放剤を使うことだ。これにより、フラッシュの発生(持続時間、強度)を軽減できる。
2.の方法でいくなら、ナイアシンの服用30分前に、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs。たとえばアスピリン)をとればいい。
3.でいくなら、DP1受容体に対するアンタゴニストであるラロピプラント(アテローム性動脈硬化治療薬)を服用すればよい。
もっとも、ナイアシンフラッシュは1,2時間もすれば自然に軽快するので、大きな心配はいらない。
結論:ナイアシンは脂質異常症患者に対する有効な治療選択肢である。ナイアシンによるフラッシュへの耐性はすぐに形成される。
治療者はナイアシンフラッシュについて事前に患者に伝えておくことが大事だ。

2009年の論文だけど、別段の新味はない。
ホッファーが大昔から言っていることを、作用機序などを多少系統立てて説明しているだけだ。
多くの患者は、薬を減らしたい、何とか他にやり方がないものだろうか、という思いで、ナイアシン(および栄養療法)にたどり着いた。
だから、ナイアシンによるフラッシュを抑えるために、また薬(NSAIDs、ラロピプラント)を飲まなきゃいけない、となっては、眉をひそめるんじゃないかな。
となれば、フラッシュが嫌な人にとっては、フラッシュフリーナイアシン(あるいはナイアシンアミド)でやっていこう、となる。

ホッファーが他の方法を挙げている。
フラッシュは末梢血管の拡張時に放出されるヒスタミンの過剰によるものだから、ヒスタミンに拮抗する物質として、事前にビタミンCをある程度高用量で飲んでおく。
高用量、というのがどれぐらいか、一概に言うのは難しいけど、朝昼夕食後、それぞれ2000㎎ずつ飲んで、ビタミンCの血中濃度をある程度高めておいて、それからナイアシンを飲むといい。
また、ナイアシンを空腹時に飲むと吸収速度がはやいので、食後に飲むようにする。

ところで、ナイアシンと一概に言っても、様々なメーカーが作っている。どのメーカーの製品がいいか、と聞かれることがある。
これはなかなか答えにくい質問だ。
まず、総じて、国産のサプリよりアメリカのサプリのほうが高品質なものが多い、ということは言えるだろう。
アメリカは保険制度が実質機能していないので、「病気になったら、破産する」というお国柄。そういう国だけに、人々の病気に対する予防意識は高い。
「サプリメントで未病を」という人が多く、それだけ、サプリ市場も成熟している。
近所のドラッグストアにあるメーカーのサプリしか買えない、と思い込む必要はない。ネットで誰でも海外サプリを買える時代だ。
「そんなことは分かっている。で、アメリカの、どのメーカーがオススメなんだ?」と重ねて聞かれる。
どのメーカーのサプリが良品質か、比較したEBMがあればいいんだけど、わからない。(どこかにあれば教えてください)
サプリ販売サイトのレビューを見たところで、比較はできないしなぁ。
ただ、僕が接する患者の声としては、「NOW社のナイアシンよりSolaray社のほうが深く効く気がする」「よく眠れる気がする」とチラホラ聞こえている。
利き水、ならぬ、「利きサプリ」のデータを蓄積できれば、よりよい助言ができると思うんだけど、このあたりのデータ収集は難しいね。