「先生、ナイアシンを飲み始めて2週間ほど経つんですけど、いい感じです。
冬のこの時期、毎年決まって、膝のこのあたりがカサカサになるんですけど、今、それがないんです。特に保湿しているわけでもないのに、潤ってます。
あと、私、夜寝ているときにトイレに起きちゃうんですけど、ナイアシンを飲み始めてから、それがなくなりました。
ナイアシンは睡眠の質を高めてくれる、って先生が言ってたから、そのおかげかな、って思います。確かに眠りの質もよくなりました。
あと、肩こりも何だか楽になりました」
連休明けの勤務。事務員から開口一番、このような喜びの声をもらった。
彼女は別段持病があるというわけでもないんだけど、ここで働くようになってからナイアシンのことを知り、試しに自分でも飲み始めてみたのだ。
文献から知識を得ることも大事だが、何よりも、こういうナマの声に接することが一番参考になる。
1日どれくらいの量を飲んでいるの?
「ソラレー社のナイアシン100㎎を1日3回です。
でね、先生、私、興味を持っていろいろインターネットでナイアシンのことを調べてみたら、怖い記述も見つけちゃって。
ナイアシンは肝臓によくない、っていうのを読んだんだけど、どうでしょうか。
私としてはお肌がきれいになったし、睡眠もよくなったから、続けたいと思っているんですけど」

そう、確かに、ナイアシンによって肝数値(AST、ALT)が軽度上昇することは普通に起こり得る。
しかし結論から言って、この軽度上昇を恐れてナイアシンを忌避するとすれば、それはまったくナンセンスだ。
心配ない。飲み続けてもらっていい。効果を実感しているなら、なおさらだ。
ナイアシンの肝臓への影響については、すでに十分な研究が行われている。
ここでオーソモレキュラー栄養療法の第一人者、ホッファーの論文を引用し、彼がナイアシンの肝臓への影響についてどのように考えていたのか、紹介しよう。
http://orthomolecular.org/library/jom/2003/pdf/2003-v18n0304-p144.pdf

肝機能検査に対するナイアシンの影響
ナイアシンやナイアシンアミドは、メチル基と結合する。つまり、体内で数少ないメチル基受容体として働いている。
従って、このビタミンの大量投与によって、メチル基欠乏が起こるというのは、筋の通った話だ。
別のメチル基受容体としては、ノルアドレナリンが挙げられる。ノルアドレナリンがメチル化すると、アドレナリンになる。
我々としては、ノルアドレナリンからアドレナリンの産生を抑えることによって、アドレノクロム(催幻覚物質)の産生を減らし、統合失調症の改善につなげたいと考えていた。
しかし、脂肪肝を生じる可能性を、我々は懸念していた。1942年、動物実験でナイアシンが肝臓にダメージを与えるという報告があったのだ。
しかしアルトシュールがこの動物実験を実際にやってみたところ、肝毒性は見られなかった。組織学的に調べても化学的に調べても、肝臓は至って正常だった。
我々はナイアシン治療を受けた患者に一連の検査を行ったが、肝臓へのダメージは存在しなかった。
ごくまれに、閉塞性黄疸を生じる患者があった。そういうときに私は、黄疸が軽快するまでナイアシンの投与を中止した。
中止したため、患者の一人では精神症状がぶり返したため、ナイアシンを再開したが、再び黄疸が生じることはなかった。
黄疸が生じることは極めてまれであり、私はこの20年、一例も見ていない。
しかし肝機能検査を行うと、ナイアシンやナイアシンアミドを服用している患者の一部で、数値の上昇が見られることがある。
これを見て、ほとんどの医師が「肝障害が進んでいる。ナイアシンは危険だ」と考えた。
パーソンズもそのように懸念していた医師の一人だったが、長らく研究と観察を続けた結果、最終的に「肝数値の上昇は、肝病変があることを意味しない」という結論に至った。
彼の結論は「ナイアシンには肝毒性はない」というものである。彼の考えは、1966年から1974年に行われたthe Coronary Drug Projectの結果を見て、確信に変わった。
この研究はナイアシンを服用する1100人を5年から8年追跡したものである。主席研究員のポール・カナーは、パーソンズに「ナイアシンに起因する異常は見られなかった」と語った。
パーソンズは以下のように結論した。
「肝数値の上昇は、上限値の2倍から3倍を超えているときにのみ、肝臓の異常を示している。肝機能を反映する酵素の軽度上昇は、ナイアシン治療の正常な反応であって、治療を中断する理由にはならない」
上昇した肝数値は、ナイアシンを継続して飲み続けていても正常値に戻るものだが、ただし徐放型ナイアシンを服用している場合は、肝数値の上昇はさらに大きくなる傾向がある、とパーソンズは指摘した。
私は肝炎のある患者に対しては、ナイアシンを高用量で投与しない。その理由は、それが有害だから、ではなく、もし何かが起こった場合にナイアシンのせいにされることが分かっているからだ。
カプッチは数十年にわたりナイアシンの研究を続けてきた。彼はレシチン1.2gを1日2回与えた患者では、肝数値の上昇がまったく見られないことを発見した。
マッカーティーはナイアシンによって生じるメチル基欠乏は、血中Sアデノシルメチオニン濃度を減らし、そのためにホモシステイン産生の増大につながるのではないかと唱えた。
この事態を避けるためには、ナイアシンと一緒にベタインのサプリを摂るといい、と彼は勧めた。
レシチンは安価で、手に入りやすい。レシチン、ベタイン、いずれもメチル基の供与体である。

徐放型ナイアシン(ナイアシンアミド、フラッシュフリーナイアシン)のほうが肝数値上昇への影響が大きい、というのは興味深い。
会社の健康診断などで、肝数値が高いと困る、ということであれば、健康診断の数日前からナイアシンの服用をいったん中止すればいいだろう。そうすれば数字はすぐに正常化する。
メーカー間の差異について、最近また「ナウのよりソラレーのナイアシンのほうがいいと思う」という声を聞いた。そろそろ切り替え時かなぁ。