コレステロールを下げる薬のうち、スタチンと呼ばれるタイプのものがあります。具体的には、クレストール(ロスバスタチン)、リピトール(アトルバスタチン)、ローコール(リピトール)、リバロ(ピタバスタチン)などです。

スタチンと認知症の関係は、スタチンが一般臨床で使用されるようになって以後、長らく言われ続けてきました。
危険性を裏付ける臨床データは無数にあります。FDAも、認知症になる危険性がある、との文言を添付文書に盛り込むよう声明を出しています。しかし決定打がない(危険だと断言できるだけのRCTがない)ということで、いまだに臨床では広く使われています。

僕の個人的な経験から言っても、認知症の人でスタチンを飲んでいる人は非常に多い印象を受けます。
処方している主治医の意向もあるでしょうから、無理に服用をやめさせることはしません。
こういうのって、医者同士の暗黙の仁義、ってところがあります。たとえ危険性を示すエビデンスが万全だったところで、向こうのお医者さんからすれば、「俺の処方にケチつけようってのか」って感じなわけで、僕も好き好んで波風立てたくありません。
しかし、不利益をこうむり続けるのは、他ならぬ患者さんです。
だから、僕なりのささやかな抵抗として、患者さんにはさりげなく伝えます。「別にそんなに無理してコレステロール、下げようとしなくていいんですけどね」と。
「いや、私はね、もうこの薬を○○先生から何年も出してもらってて、何の問題もありません。これで健康保ててます」と言われるようであれば、素直に引き下がります。
認知症患者の治療となれば、可能性のある芽は少しでも摘んでいきたいんだけど、実際の臨床現場って、そういう「データがものをいう」だけの単純な世界じゃなくて、いろんな人のいろんな思惑があって、なかなか難しいものなんだなぁ。