オーソモレキュラー医学会のため、一泊二日で東京に行った。
二日間にわたり、十数人の先生方がそれぞれ30分ほどの講演をした。
どの講師の話もおもしろかった。
当然のことだ。
症状を抑えるだけの対症療法について講演する先生は一人もいなかった。皆、根本を見据えた治療に取り組んでいる先生なのだから、つまり、僕と志を同じくする先生なのだから、おもしろいのは当然のことだ。

医学部で患者を治療する技術を学んだはずだった。ところが、いざ現場に出てみると、学んだ技術ではまったく患者を救えないことを知る。治療どころか、有害無益としか思えない医療行為さえある。良心が痛い。「自分は一体6年間、何を学んできたのだろう」無力感と罪悪感にさいなまれる。大きな挫折だ。

ここが分岐点。この挫折を、冷静に割り切ることで乗り越える人もいる。
「そもそも医者の仕事は、患者を真に治療することではない。診療ガイドラインに基づいて、淡々粛々と処置を行い、薬を処方する。これが医者の仕事なんだ」
人を癒したくて医者になった初心はどこかに捨てて、そもそも医者というのはそういう仕事ではないのだ、と認識を改める。
こういう「悟り」を得た人は、強い。もはや西洋医学を疑わないし、良心も痛まない。
「先生に言われた通りに薬を飲んでるんですけど、全然よくなりません」と患者が言う。
知らんがな。俺はガイドラインの通りに薬出してるだけだ。文句があるならよそに行けよ。
治すことが目的じゃない。規定の処置・処方を行うことが医療だから、そこにケチをつけられても困る。文句は国に言ってくれ、ということになる。

一方、挫折の分岐点で、自分の学んできた医学を疑い、違う道を模索する人もいる。
鍼灸・漢方のような東洋医学に希望を求める人もいれば、栄養療法に希望を求める人もいる。
今回の演者の先生方は皆、栄養療法に希望を見出し、ゼロから学び直して研鑽を積み、こうやって大勢の前で講演をするまでになった。
そういうプロの先生の話なのだから、おもしろくないわけがないんだな。

もちろん内容的には、まったくの初耳、という話はほとんどなかった。
僕もそれなりに勉強してきて栄養療法を実践しているわけだから、当然そうなるよね。
だから当初、この学会の話を知ったときには、行こうか行くまいか迷った。
クリニックを閉めて、参加費、交通費、宿泊費を払ってまで行くだけのメリットがあるだろうか?知ってる内容の話ばかりで、学ぶことがなかったらどうしよう?
もちろん、こんな悩みは杞憂に終わった。参加してよかった。
学ぶことはたくさんあった。

なかでも衝撃的だったのは、医療大麻(CBDオイル)の有効性に関する飯塚浩先生の話だ。
アメリカなどで医療大麻が解禁されていることはニュースで聞き知っていたが、具体的にどんな疾患にどのように効果があるのか、まったく知らなかった。
大麻=麻薬=ダメなもの、という感じで思考停止に陥っている人は多いと思う。僕もその一人だった。しかし諸外国で次々と大麻が解禁されている意味を考えてみるといい。各国政府もその薬効を認めざるを得ないんだ。
CBDオイルが効果を発揮する疾患をざっと挙げると、けいれん、疼痛、嘔気、不安、感情失禁、認知症の易怒性など、数多い。
先生の症例報告を聞きながら、治療に難渋している僕の患者のことを思い出した。何をやってもいまいちパッとしない。そういう人にもCBDオイルが効くかもしれないな。
治療法のチョイスは多いほうがいい。うちでも導入しようと思った。